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ダウン症児と子供達が暮らしやすくするために先生がすべき事とは

数ある障害の中でも、ダウン症児は珍しい障害ではありません。ですので、小学校などでは子供達とダウン症児は一緒に学校生活を送ることが多く、その際には教師のサポートが必要不可欠です。ダウン症児と子供達が心のバリアをなくし分け隔てなく自然に仲間として暮らしていくために、教師は何をすべきなのでしょうか?

今回はダウン症児だけでなく、子供達へのサポートの仕方も合わせて紹介します。

 

ちょっとした工夫が相互の架け橋になる

ダウン症児は様々な特徴がありますが、サポートをしっかりと行っていけば、一緒に学校生活を送ることが十分に可能です。また、支援が必要な子供と他の子供達が一緒に生活を送ることで、ダウン症児にも良い刺激があると共に、子供達も支援が必要な人にどのように接したらよいのか、サポートをする時にはどうすればよいのかということを学ぶきっかけにもなります。

しかし、子供達にとってもダウン症児にとっても、最初の一緒に学校生活を送る時は、良い意味でも悪い意味でも真っ白な状態です。お互いに何も知らないので、時には行き過ぎた介助があったり、はたまた必要なサポートや配慮が出来ていない場合があります。そんな時には、教師が間に入りお互いの意見、特徴を説明した上で、どのようにすれば良かったのかを考える時間を取りましょう。

学校生活の中で一緒に生活をして支援が必要な人に対して、心の壁がなく自然に接することが行えるように、教師は双方のサポートをしっかりと行っていかなければなりません。教師の工夫がダウン症児と子供達が理解を深め、仲間として生きていくための架け橋になることが大切です。

 

まずは子供達へダウン症がどのような特徴があるのかを伝えていこう

ダウン症児と子供達が共生していく中で、やはり子供達は多くのことを疑問に思います。一緒に学校生活を送る中で、双方が暮らしやすくなるためには、まずはダウン症がどのような病気でどのような症状や特徴があるのかを、きちんと伝えていくことが大切です。どのような病気かを知らず理解がないままだと、教師がダウン症児に対してサポートや配慮を行っていても、子供同士で行動に移すことは難しくなり、結果的に分かりあうことが難しくなります。

外見が似ていることや、筋力や体力が弱いこと、気持ちを切り替えにくいことなど伝えていくことで、子供自身もどのように介助していけば良いのかを考えるきっかけになります。

 

ダウン症の主な特徴とは

・骨の発達上外見が似ていることが多い・筋力が弱く姿勢を保つことが難しい

・明るく一緒に遊んだりすることが好き

・正確な言葉を発声しにくい

・動作がゆっくりとしている

・気持ちが切り替えにくく頑なになってしまい動かなくなることがある

・言葉で説明しても理解しにくい

・運動が制限されている場合がある

 

ダウン症の特徴を伝えていくことで、子供達がダウン症児がなぜこのような行動をしていたのかを知ることが出来ます。何も知らない状態では、理解することも難しいので、しっかりと正しい情報を伝え子供達の疑問にも答えられるようにしておきましょう。

 

一緒に活動をする時にはまずは教師が仲介者になろう

ダウン症の人は、顎の筋力が弱かったり、口の構造上言葉が正確に発声出来ない場合があります。ですので、ダウン症児は自分のしたいことや、他の人を助けてあげたいと思い言葉にして伝えているつもりであっても、中々子供達には伝わらないことがあります。また、楽しいことをする時や嬉しい気持ちが高ぶってしまうと早口になってしまうことがあり、周りの人はさらに言葉を聞き取りにくく何を言っているのか理解しづらくなってしまいます。

ダウン症児と子供達が一緒に活動をする時には、教師が補助として加わり、それぞれの伝えたいことやしたいことを通訳し伝えていくようにしましょう。

また、聞き取れなかった時には子供達に聞き返しても良いことも伝えていきますが、その際にはどのように聞けばよいかを一緒に考えていきます。つい年下のように接してしまいがちですが、同じ年齢の友人として関わっていくことが大切になりますので、話す時には子供達が会話するのと同じように話すようにすることも伝えていきましょう。

ダウン症児は、人と会話をしたり楽しいことをすることが大好きな人が多いです。ですので、コミュニケーションの1つである会話を、子供達とダウン症児が出来るように教師は配慮していくようにすることが大切です。

 

内容を説明するときには絵などを用意してわかりやすくする

学校生活では課外授業や遠足といった、学校外に出て経験することも多くあります。そんな時には注意事項や、今後の活動の流れの説明などは長くなってしまいます。ダウン症児は、長く言葉で説明されても内容を理解しづらいことがありますので、内容を説明するときには絵を描いたカードを用意しておき、目からの情報も合わせて伝えていくようにしましょう。言葉だけでは何をすれば良いのかわからず、座りこんでしまい活動が出来ない場合がありますので、説明をする時には事前に準備しておくことが大切です。

また、全クラスに対して説明しなければならない時には、全体で説明した後に個別でダウン症児に説明するとわかりやすく理解してくれることが多くなります。例えば『今日は色を塗りましょう』という内容を説明をすると、子供達は自分の好きな色で次々に塗ってきますよね。しかし、ダウン症児は『色を塗りましょう』と言われても、何色から塗ったらよいのか、どこから塗ったらよいのかと考え込みどうすれば良いのかわからなくなってしまいます。漠然とした説明だとわかりにくいので、個別で『どこから塗ろうか』『何色がいいかな』といったように対応するようにしましょう。

 

座り込んでしまったり動かない場合にはどうしたらよいか一緒に考えよう

ダウン症児は気持ちの切り替えが難しく、また自分の思いと違うことを無理にしなければならないとなると、座り込んでしまったり腕を組んで動かなくなってしまいます。そんな時には、無理に引っ張ったり急かすような言葉掛けはしないことが大切です。

しかし、子供達からするとなぜ座り込んでしまっているのか、動かなくなったのかは理解出来ません。教師はダウン症の人の特徴の1つとして、座り込んでしまうということがあることを説明した上で、どうしたらよいかを一緒に考えるようにします。

答えを先に出すのではなく子供達と一緒に考えることで、ダウン症児だけでなく他の障害を持っている人に対しても、どのように配慮するべきかを考える力を培うことが出来ます。子供の意見を取り入れつつ、実際に自分だったらどうして欲しいかを問うようにしましょう。

 

ハイキングや長時間歩く場合にはスケジュールに工夫を

学校生活では、遠足や課外授業など屋外での活動も増えていきます。登山やハイキングといった長時間歩いたり体を動かす場合には、スケジュールを工夫していくことが大切です。

ダウン症児は体力が他の人と比べると少ない場合が多いので、長時間歩いたり活動することが困難な可能性があります。また、終わりのない活動に飽きてしまい行くこと自体途中で拒否するケースも考えられます。

ダウン症児が楽しく最後まで一緒に活動するためには、体調や体力などを考慮し、休憩をこまめに取ったり、予めダウン症児に『ここまで歩いたら休憩しようね』とポイントを説明しておくようにしましょう。

先の見通しがあることで、ダウン症児は気持ちを高めることが出来、休憩をこまめにとることで体力を温存しておくことが出来ます。ダウン症児はみんなで一緒に努力をしたり頑張ることが大好きです。ですので、みんなと一緒に参加出来るところは積極的に参加させていくようにしましょう。そうすることで、ダウン症児にとっても子供達にとっても良い刺激になり、お互いの理解を深めることが出来ます。

 

自分で出来るように励ましの言葉や感謝の言葉の大切さを伝えていこう

ダウン症児の中には、手先が不器用な人がいます。元々手足の指が短い人もいますが、どうしても細かい作業がしにくく時間がかかってしまうことが多くあります。その結果、失敗することを嫌がったり、時間がかかってしまうことがわかってくると、人にしてもらおうとすることがあります。一人で黙々と作業をすることが苦手という面もありますので、ついつい人の助けを求めてしまいますが、そんな時には手を貸すのではなく言葉掛けをして励ましていくようにしましょう。自分で出来る範囲は自分ですることが大切ですので、『ここはこうするんだよ』と伝えていき、出来た時には喜びを共感することで、ダウン症児も前向きに努力することが出来るようになります。どうしても難しいところはフォローが必要ですが、あくまでもフォローという形で関わるようにしましょう。一番大切なところは自分で行えるように言葉で伝えていくように配慮していきます。

また、ダウン症児の性格の1つとして世話をすることが好きなことが挙げられます。『ありがとう』と笑顔で言ってもらえることがとても嬉しいために、世話をしたい、他の人の役に立ちたいという思いが強くあります。しかし、他の子供も自分で完成させたいという思いがありますので、困っている人を助けることはとても素晴らしいことだということを伝えた上で、手伝いがいらない場合にはきっぱりと断ることを子供達にも伝えていきましょう。

ダウン症児のスピードに合わせて生活を送ったり、ダウン症児や子供達自身が考えてサポートをしていくことや相互理解では大切ですが、自分のことは自分でするという基本的な姿勢は崩さないようにしましょう。

 

気持ちの整理をつけやすくするために行動は早めに連絡しておくようにする

ダウン症の人は気持ちをさっと切り替えて次の行動に移すことが苦手ですので、急に『もうおしまいだよ』と伝えても気持ちの整理をつけることが出来ません。自分がまだしたいことがあったり、熱中していることがあると次の行動に移りにくくなります。そのため、時間が決まっていることである場合には、終わる10分前に『もう少しで終わりだよ』と声をかけておき、心の準備が出来るようにしましょう。前もって活動の時間がもうすぐ終わることを把握しておくだけで、ダウン症児はすんなり気持ちを切り替えることが出来るようになります。

また、言葉だけでは理解しにくい事もありますので、何か重要な説明や順序に沿って行わなければならない場合には、予め順番に沿って絵や図をプラスしておくなど、事前準備をしておくとスムーズに行動へ移すことが出来ます。

 

責め立てたり時間をせかさないようにする

ダウン症児は行動や動作がとてもゆっくりな人が多いです。頭では急がないといけないことや、次にしなければならない事がわかっていても、筋力など理由も相まってどうしてもゆっくりした行動になってしまいます。周りからみるとのんびりとしているように見えますが、『早く』と急かすのはNGです。ゆっくりでも出来たことをほめて次へ繋げられるようにしていくことが大切です。子供達も同様で、ダウン症児に対して『早くしないとだめだよ』と言葉掛けするのではなく『あと〇分で始まるよ』と具体的に言葉掛けをしていけるように教師は伝えていきましょう。

また、腕組みをして黙り込んでしまったり、座りこんでしまうと、どうしても理由を聞きだすために、つい強い口調になってしまったり何度も執拗に原因を探そうと問いただしがちです。しかし、座り込んだ時に腕を引っ張って体を無理に起こそうとしたり、必要以上に質問・問いただすのは非常にストレスになってしまいます。黙り込んだり座り込んでしまった時は、ダウン症児も自分の考えがあり意思がありながらも、自分で伝えられないもどかしさと葛藤しています。座りこんだり黙り込んだ時は、最初はそっとしておき、頃合いを見て座り込んでしまった理由を質問するようにしましょう。責め立てるような口調や、急かす言葉はかけないことが大切です。

 

まとめ

子供達にとって支援が必要な人と接するということは、自分が相手について理解しどのようにサポートしていくのが良いのかを自分自身で考える力を養い、見出すことが出来ます。また、学校生活を通して障害に対して特別視するのではなく、あくまでも共に生活する仲間としてサポートを行っていけることが大切です。そういった自然な感性を持つ子供達が少しでも増えていけるように、教師は仲介者としてそれぞれの子供達をサポートしていくようにしましょう。授業を工夫したり、お互いを理解出来るように配慮することが、子供達とダウン症をはじめ多くの支援が必要な子供との心の間に壁が出来ずに仲間として過ごすことが出来るきっかけになります。

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