訪問看護を利用する時には、支援計画を立てた上で訪問看護サービスを利用することになりますが、その利用費用では『医療保険』と『介護保険』のどちらを利用するかという話が出てきます。『医療保険』と『介護保険』、名前は聞いたことがあっても、実際には違いを理解するのは難しいですよね。今回は訪問看護を利用する時に重要になる『医療保険』と『介護保険』について詳しく解説します。
1.そもそも『医療保険』と『介護保険』とは?
『保険』という名前を聞くと様々なものを思い浮かべますよね。健康保険から社会保険、自動車保険など私たちの生活と『保険』とは密接に繋がっています。訪問看護を利用する時にも『医療保険』と『介護保険』のどちらの保険を利用するか、という話は必ず出てきますので、『医療保険』と『介護保険』について理解しておくことは非常に大切です。
では、そもそも『医療保険』と『介護保険』とは何なのでしょうか?
『医療保険』
私たちの日常生活の中でも特に溶け込んでいるのが『医療保険』です。『医療保険』とは、病気になった時や事故をした時にかかる治療費の一部を負担してくれる保険になります。一般的な治療であれば自費であっても極端な費用になることはありませんが、病気や怪我の治療の中には非常に高額な治療費になるケースがあり、それを自費負担するとなると厳しくなり医療費による貧困が生じてしまう可能性があります。そうなると、医療費により生活を圧迫してしまい、安定した生活を送ることが出来なくなってしまいますので、国が定めた『医療保険』に加入することで治療費の一部を負担しきちんと治療を受けるだけでなく安定した生活を送ることが出来るようになります。
『医療保険』には社会保険としての公的な医療保険と、民間企業が提供している医療保険があります。民間企業が提供している医療保険は、入院や手術、がんなどの大きな病気に対して手厚い保証がある医療保険になり、自分が経済的にカバーしていきたいことに関して、任意で加入することが出来ます。民間の企業が行っている医療保険は、公的な医療保険では不安な部分のプラスαとして加入することが出来ます。義務ではありませんので、加入している人によって保障内容か加入条件は異なります。
任意で加入することが出来る民間企業が提供している医療保険に対して、公的な医療保険は国民が何らかの公的な医療保険に加入することが決められています。公的な医療保険に加入していないと、病院を受診した時に全額自費負担になってしまい、治療のたびに膨大な金額がかかってしまいます。働いている人であっても働いていない人であっても、適した公的な医療保険がありますので加入することが出来ますが、勤務先などによって保険が異なります。
このように、単に企業であっても従業員の人数によって加入する医療保険は異なります。公的な医療保険は勤めている企業で手続きをしてくれることが多いですが、自営業者や専業主婦の場合であれば市町村の自治体に直接手続きをしにいかなければなりません。
必ず訪問看護を利用する前に、自分がどの医療保険に加入しているかを確認しておきましょう。
健康保険
・全国健康保険協会…常時5人以上の従業員がいる事務所等
・組合管掌健康保険…700人以上の従業員又は同業者の企業
・日雇特例被保険者の保険…日雇い労働者
共済組合
・国家公務員共済組合…国家公務員
・地方公務員共済組合…地方公務員
・私立学校教職員共済…私立学校の教職員
船員保険
・船員
国民健康保険
・国民健康保険(市町村)…自営業者や専業主婦など
・国民健康保険(国保組合)…300人以上の従業員がいる自営業者や同業者
後期高齢者医療保険
・75歳以上または65歳~74歳で一定以上の障害がある状態がある人
『介護保険』
『介護保険』とは介護が必要となった人に対してかかる費用を給付してくれる制度です。自分が高齢になり介護が必要になった時だけでなく、家族に介護が必要になった時にもサポートしてくれます。
介護保険では、単なる入浴や食事の介助といった身の周りの世話のイメージが強いですが、被介護者の自立を支援していく「自立支援」や、介護サービスを自由に選択し総合的に受けることが出来る「利用者本位」、収めた保険料に伴ってサービスや給付を受けることが出来る「社会保険方式」の3つを中心に取り組みが行われています。介護保険は高齢者が自立した生活を送ると共に、しっかりと尊厳を持った人生を歩んでいけるように、地域社会全体で支えていこうということが大きな理念です。
介護保険は成人した時から払わなければならないのではなく、40歳以上になった月から加入することになりますので、その月から支払いがスタートします。支払いは義務になりますので、必ず介護保険料は支払わなければなりません。介護保険の制度により被介護者の方は介護保険を利用することが出来ますが、40歳以上になりますので39歳以下であれば、介護が必要であっても介護保険を利用することは出来ません。介護保険には年齢によって区分があります。
・第一号被保険者…65歳以上
・第二号被保険者…40歳~64歳
「第一号被保険者」の場合であれば、介護が必要であると判断された場合には、日常生活の支援やサポートを受けるために介護保険から給付金を受け取ることが出来ます。デイサービスなどを利用するために、給付してもらうことが出来ますので、経済的な負担も減らすことが出来ます。
「第二号被保険者」の場合だと、脳梗塞や脳出血といった脳に関係する疾患を患った場合や、末期がん、関節リウマチといった特定疾患(16種類)に該当し、要介護認定を受けた場合にのみ給付金を受け取ることが出来ます。それぞれ病気や病気の程度によって異なりますので、詳しくは主治医に相談しましょう。
◆第2号被保険者の16特定疾患
・末期がん ・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症 ・後縦靭帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症 ・初老期における認知症
・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病
・脊髄小脳変性症 ・脊柱管狭窄症
・早老症 ・多系統萎縮症
・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病網膜症
・脳血管疾患 ・閉塞性動脈硬化症
・変形性関節症(両側の膝関節、股関節に著しい変形を伴う)
(引用:介護LIFULLより)
◆厚生労働大臣が定める疾病等
・末期の悪性腫瘍 ・多発性硬化症
・重症筋無力症 ・スモン
・筋萎縮性側索硬化症 ・脊髄小脳変性症
・ハンチントン病 ・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病(ホーエンヤールの重症度分類がステージⅢ以上で、生活機能障害度がⅡ度かⅢ度のもの)、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症
・多系統萎縮症、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイドレーガー症候群
・プリオン病 ・亜急性硬化性全脳症
・ライソゾーム病 ・副腎白質ジストロフィー
・脊髄性筋萎縮症 ・慢性炎症性脱髄性多発神経炎
・後天性免疫不全症候群 ・頸髄損傷
・人工呼吸器を使用している状態
介護保険では、それぞれ「居住サービス」と「施設サービス」を受けることが出来、介護を行う上での支援になります。
「居住サービス」では、自宅にいながら入浴や排泄、家事などの世話をサポートしたり、デイサービスやショートステイ(短期滞在型)を利用したりすることが出来、訪問看護もこちらにあてはまります。
「施設サービス」では特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった施設を利用することが出来ます。他にも介護保険により、介護用具の貸し出しのサービスや、介護をするための手すりやバリアフリーにリフォームする際にも給付を受けることが出来ます。
『医療保険』と『介護保険』は同じ保険ですが、医療行為の治療費を一部負担してくれることで経済的なサポートをしてくれるのが『医療保険』、40歳以上で介護が必要になった時に介護にあたる利用料を給付してくれるのが『介護保険』になります。同じ保険という言葉が入っており、どちらも経済的な負担をカバーしてくれるという意味では同じですが、カバーする内容は異なってきますので、違いを理解しておくことが大切です。
2.訪問看護では『医療保険』?それとも『介護保険』?
『医療保険』と『介護保険』の違いを把握した上で、では訪問看護を利用する時にはどちらを利用することになるのでしょうか?
『医療保険』と『介護保険』のどちらを利用するのかというのは、訪問看護を利用する人の体調や年齢が大きく関係します。というのは、医療保険の場合には訪問看護を利用する時の回数などが制限されておりどちらを利用するかは、健康状態や年齢により考慮されます。
訪問看護を利用する時に、自分が『医療保険』か『介護保険』に該当するかは以下のチャートで調べることが出来ます。
40歳以下の場合や40歳~64歳で特定疾患がない場合、要介護認定が該当しない場合であれば医療保険が適用されます。しかし、40歳以下の場合や40歳~64歳で特定疾患がない場合には、医療保険でも週3日までしか利用することが出来ません。それに対して、要介護認定が該当しない場合の医療保険は、週4日以上で2か所のSTの利用をすることが出来ます。また、65歳以上で特定疾患がある場合には、介護保険を利用して訪問看護を利用することが出来ます。このように、年齢だけではなく、病気や障害がないかという点も大きなポイントになりますので、実際に自分がどちらの保険を利用すれば良いかはケアマネージャーやソーシャルワーカー等に相談して判断してもらうことが重要です。
3.民間の保険は訪問看護で利用することが出来る?
介護保険や医療保険で費用をカバーすることが出来る訪問看護ですが、では民間の保険では訪問看護が対象になるのでしょうか?
民間の医療保険では通院や入院が対象になり、あくまでも医療行為に対しての保険になります。急な病気や事故による出費をサポートするための保険になりますので、訪問看護のように継続的な医療行為に対してはカバーすることが出来ません。がんや脳血管疾患などの手術や入院があれば、民間の医療保険で対応することが出来ますが、訪問看護となると保証内容に含まれていないことが多いので利用することは厳しいのが現状です。しかし、実際に自分がかけている医療保険の保証内容に訪問看護が含まれている場合もありますので、まずは自分の医療保険を見直し相談窓口で訪問看護で利用できるかどうかを必ず確認しておくことが大切です。
4.まとめ
訪問看護を利用するためには必ず費用が発生します。その費用をサポートするために、『医療保険』や『介護保険』があります。しかし、どちらを利用するのかは年齢や健康状態が深く関係していますので、まずは主治医やソーシャルワーカーに相談してみましょう。民間の医療保険で訪問看護の費用をカバーすることは難しいですが、介護という面であれば、年金式で給付される保険もありますので、今後について考える場合なら一度そういった保検を考えておくことも大切です。