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発達障害の用語集

発達障害といっても、実はたくさんの種類があります。それぞれの障害で異なる特徴がありますので、しっかりと理解して支援していったりサポートしていくことが大切です。
今回は発達障害の基本的な用語について解説していますので、発達障害についてより理解していく手段として活用してください。

 

障害とその特徴

限局性学習障害(LD)


限局性学習障害は一般的にLDと言われていますが、知的発達の遅れはないものの、『読む、書く、話す、聞く、計算、推理』の中で特定の能力に関して著しく困難な場合に診断されます。得意と不得意の差が非常に大きく、1つの分野に関しては人並み以上の能力がある一方で、苦手な分野に関しては全く出来ないということが多くあります。
LDは小さい年齢の時にはわからず、小学校に入り勉強が始まったときに診断されることが多くなります。LDは中枢神経の機能障害と言われていますが、原因ははっきりとは解明されておらず、また周囲からの理解も受けられないことが多いために『勉強不足だ』『怠けている』と誤解されがちです。LDは怠けているのではなく、機能障害が原因ですること自体難しいといことを周囲が理解しサポートしていくことが大切です。

 

*ディスレクシア


LDの中でも、特に読み書きが極端に苦手な人のことを『ディスレクシア』と言います。日本語では読字障害ともいわれますが、目や耳から入ってくる情報を瞬時に答えと結びつけることが難しいので、口頭で説明されてもすぐに理解出来ません。しかし、全く出来ないのではなく時間をかければ読むことも書くことも出来ます。
ディスレクシアは特異LDとも言われますが、欧米では10%程度、日本でも5%程度が発現していると言われており、珍しい障害ではありません。話す時はゆっくり話したり、絵などを用いて説明していくなど工夫していくことで、早く理解することが出来ます。

 

自閉症スペクトラム


発達障害の中でも特に有名なのが『自閉症スペクトラム』です。以前は自閉症と言われていましたが、現在はアスペルガー症候群や広汎性発達障害等を合わせて『自閉症スペクトラム』と呼んでいます。自閉症スペクトラムの特性としては、同じ道を通らないとパニックになってしまったり、朝のルーティンが狂ってしまうと混乱してしまうなどのこだわりの強さと、相手の気持ちを読み取ったり空気を読むことが苦手という対人関係の不得手があります。自閉症スペクトラムは知的障害を併せていることも多いので、知的障害からのサポートも必要になり、療育や医療をしっかりと連携していく必要があります。 自閉症スペクトラムは治療をして改善することは出来ません。ですので障害というよりも、特性や個性として捉え支援していくことが大切です。

 

*アスペルガー症候群


以前は自閉症と別の発達障害として、知的障害を伴わない自閉症という区分でアスペルガー症候群がありました。しかし、現在は明確に自閉症とアスペルガー症候群の線引きをすることが難しくなったため、現在はアスペルガー症候群も自閉症スペクトラムに含まれています。アスペルガー症候群は言葉の遅れが目立たないことが多いので、発達障害と気が付きにくくなり、大人になるまで気が付かないままの人もいます。しかし、自閉症同様に対人関係で悩むことが多く、相手が傷つくことを言ってしまうなど相手の気持ちを考える事が難しかったり、社会のルールやマナーを自然に学ぶことが難しいので、コミュニケーションがとりにくくなり生きづらいと感じ二次障害に至る可能性もあります。
自閉症と同様に、周囲がアスペルガー症候群について理解すると共に、ソーシャルスキルやライフスキルをトレーニングしていくことが大切です。

 

*広汎性発達障害(PDD)


広汎性発達障害(PDD)は以前発達障害の1つとして認識されていました。しかし現在は、広汎性発達障害が自閉症やアスペルガー症候群、限局性学習障害、注意欠陥多動性障害等を合わせたものを指します。複数の発達障害を併せている人もおり、自閉症スペクトラムとADHD両方の特性を持っている人もいます。
広汎性発達障害はコミュニケーション能力や社会性の障害が特性としてありましたが、自閉症やアスペルガー症候群などの特性も持ち合わせている場合があり、境界線が難しくなります。他の発達障害も同様で、周囲の理解がなければ理解してもらえない苦しみから二次障害を起こしてしまう可能性があります。

 

*注意欠陥多動性障害(ADHD)


自閉症スペクトラムに含まれる発達障害として注意欠陥多動性障害(ADHD)があります。ADHDはじっとしていられなかったり、集中力が持続しない『不注意』、じっとしていられず落ち着くことが出来ない『多動性』、気持ちを抑えることが出来ず待つことが難しい『衝動性』という特性が見られる発達障害です。ADHDは3つのタイプに分けられ、不注意がメインにある『不注意優勢型』、じっとしていられなかったり、衝動的に行動してしまう『多動性衝動性優勢型』、全ての特性が合わさっている『混合型』のどれかに属します。混合型といっても、全ての特性が大きく現れるのではなく、その人によってどれが強く現れるかは異なります。ADHDは小学校に上がるくらいから目立ってきますが、小さい年齢の時にはどの子どもにもみられる特性になりますので気が付きにくくなります。また、小学校低学年でもADHDと似通った症状の子も多いので、周りからは乱暴な子、しつけがなっていないと思われやすく誤解されやすいので、ADHDはしつけや性格ではなく障害の1つということを周囲が知ることが大切です。

 

強度行動障害


強度行動障害はあまり知られていない発達障害ですが、激しい自傷行為や暴力などを何度も家族や周囲の人にしてしまいます。医学的な用語ではなく、福祉や行政で強度行動障害という名前は使われています。強度行動障害は噛みつきや頭突きというものから、物を壊して回ったり、不眠症など様々な症状が多く頻繁に起きてしまいます。他の発達障害と同様に、家庭環境や育て方が原因ではなく脳の機能障害です。しっかりと症状や状況を把握し、その人にあった支援をしていくことが求められます。障害の特性上、家庭内にいながらの療育だけでなく、専門的な施設や医療を組み合わせていくことが大切です。

 

発達性協調運動障害


発達性協調運動障害とは、以前であれば極端に不器用な子という印象で捉えられていたものですが、実は脳が運動を行うことに関して関連づけて動作を指示出来ない障害です。例えば、縄跳びをするのに手で縄を持ち、タイミングを合わせてジャンプするというように、1つの行動を起こす(協調運動)のに必要な動作を一緒に行うことが出来ません。運動面だけでなく、ボタンを上手に止められなかったり、お箸を使うことが出来ないなど小さい動作も出来ないことがあります。
知的な遅れや他の障害は見られないので、親のしつけがなっていない、運動不足だと叱責を受けることが多く、二次障害に悩む可能性もありますので、周囲が出来ないことは障害のためという理解が必要不可欠です。
発達性協調運動障害は1クラスに対して2人程度はいると言われてるので、決して珍しい障害ではありません。そういった面でも、障害について周囲が理解し支援していく必要があります。

 

小児期崩壊性障害


小児期崩壊障害は以前は当たり前のように出来ていたことが、急に出来なくなってしまう障害です。話すことが出来ていたのに、急に話すことが出来なくなってしまったり、笑顔が出なくなってしまいます。コミュニケーションがとれなくなってしまうこともありますので、療育などを行っていくことが大切です。自閉症スペクトラムと似ていますが、先天的な障害である自閉症スペクトラムと違い、小児期崩壊障害は一度は正常に成長したもののそれが急に損なわれてしまいます。
小児期崩壊障害は3~4歳で発症したのち、障害の進行は落ち着きますが、精神遅延や知的障害を併発していることが多くなります。

 

チック症


チック症とは児童期から青年期に発現しやすい障害の1つで、強いストレスや疲労によって起きる可能性があります。チックの症状としては、無意識の内に身体を動かしてしまったり、声を出してしまうことで、自分の中で気にしている時や心配なことがあると悪化してしまうこともあります。
チック症は運動チックと音声チックに分けられた上、症状の持続時間の長さから単純型と複雑型に分けられます。何度もまばたきを繰り返したり肩をすくめる『単純運動チック』、咳払いや鼻を繰り返しすする『単純音声チック』と、自分を叩いたり跳ねたりする『複雑性運動チック』、特定の言葉を何度も繰り返したり、わいせつな言葉を話し続ける『複雑性音声チック』があります。また、基本的にはどちらかのチック症になりますが、中には運動チックと音声チックの両方の症状がある『トゥレット症候群』の人もいます。
チック症はその行動を注意したり無理に治させようとすると、かえって症状が悪化してしまうことがありますので、チックの症状があっても普段と変わらずに、チックの症状については指摘をせずに、本人のストレスや疲労を取り除いていくことが大切です。

 

吃音症


吃音症とは、話言葉がスムーズに出てこない障害です。『わ、わ、わたし…』にように最初のことばがスムーズに出てこない語音の連発や、『わーたし…』のように語音を引き延ばす伸発、『…わたし』というように語音がつまってしまう難発があります。吃音は小さい時には本人も気になりませんが、年長から小学校に入ると自分がスムーズに話せないことに対して恥ずかしいと思ったり、イライラしてしまうことがあります。また、吃音の様子を周りの子どもが真似したりして心理的な不安が募っていくと、どんどん悪化してしまいます。
吃音症は特別な療育や支援をしなくても、成長していくにつれて治まってく行くことが多いです。もし、中々吃音症が治まらない時には、言葉の教室や言語聴覚士による支援を受けることで、吃音が出ないようにコントロールする力を培うことが出来ます。

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