発達障がいを持っている子どもは、小さい時からこだわりが強かったり、周りと一緒に遊ぶことが苦手であったり、環境の変化に敏感だったりと育てにくさを感じることがあります。発達障がいの子どもはその特性から、苦手なことや困難なことと得意なことの差が大きく、凹凸があることが多くなります。そのため、接し方や生活での工夫はどうすれば良いか迷ってしまいますよね。今回は発達障がいの子どもとの接し方から生活の工夫まで、どのように関わっていけばよいかを紹介しますので、是非参考にしてください。
1.育てにくさを感じやすい発達障害の子ども
メディアや書籍で取り上げられることが多くなった発達障がい。近年認知度が上がったために、親自身が自分の子どもの発達で気になるところがあれば相談や検査に行くことが出来るようになり、早期発見が出来ることが多くなってきました。発達障がいは早期発見を行い、その子がどのような特性を持っているのかを把握し、療育を行っていくことで困難や苦手な部分を改善したり克服することが、将来の社会生活での自立へ繋がっていきます。早期発見は非常に重要ですが、発達障がいは生まれた時にはわかることはなく、年齢が上がっていくにつれて、その年齢相応に出来ることが出来なかったり、他の子どもと一緒に遊ぶことが出来ないといった特性による発達の差が目立つようになっていきます。
『育てにくさ』を感じることが多いと言われている発達障がいの子どもですが、発達障がいの種類によってその特性や育てにくさは異なってきます。
発達障がい別の特性と育てにくさの一例
自閉症スペクトラム
主な特性 ・あやしても反応が少ない、ない ・人見知りや後追いをしない ・相手の気持ちや空気を読み取りにくい ・臨機応変に対応することが出来ず気持ちの切り替えが苦手 ・対人関係が上手く取れず孤立しやすい ・こだわりが強い ・感覚や食の偏りが強い ・好きな事には高い記憶力や集中力を発揮する 感じやすい育てにくさの例 ・興味がある所へ走っていってしまうので事故や怪我が多い ・こだわりの強さから少しでも異なると癇癪を起してしまう ・友達と一緒に遊ぶことが出来ずトラブルになったりする ・意思疎通が図りにくい ・自分の中のルールに反するとパニックになってしまう ・偏食が多く決まったもの以外は口にしない ・周りからすると平気な音などでもとても嫌がる ・思ったことをストレートに言ってしまったり空気を感じ取れない
名称:注意欠陥多動性障害(ADHD)
主な特性 ・集中力が持続しずらい ・忘れ物が多くボーッとしていることが多い ・気になるものがあると意識がそちらへ向いてしまう ・気持ちの切り替えが難しい ・片付けや整理整頓が苦手 ・衝動的な気持ちを抑えることが出来ない ・ルールや順番を守ることが難しい ・いやな事があると手が出てしまうことがある 感じやすい育てにくさの例 ・みんなで座っていてもじっとせず常に動き回っている ・ぼーっとしていて呼びかけに反応しない ・こだわりが強く外出先などで意思が通らないと癇癪を起し泣き叫んでしまう ・大声を出してしまったりパニックになってしまう ・ルールを守ることが出来ず自分が行きたい場所へ並んでしまう ・物をなくしやすかったり、忘れ物が多い ・感情が抑えられず他の子に手が出てしまう ・自分が決めた事を曲げることが難しい
代表的な発達障がいである自閉症スペクトラムと注意欠陥多動性障害(ADHD)では、このように特性があり、それが小さい時は特に育てにくさとして現れてくることが多くあります。今回紹介した育てにくさはあくまでも一例ですので、その子どもの障がいの程度や状況によって異なります。
発達障がいは個人差が大きくその子に合った支援や指導を行っていくことが大切になります。また特性にとっても接し方は変わっていきますので、まずはしっかりと発達障がいの特性について理解することが重要になります。
2.発達障がいの特性を理解することが第一歩に
先ほど述べたように、発達障がいは個人差が大きく特性も必ずしも誰にでも当てはまるものではありません。以前はアスペルガー症候群や広汎性発達障害と言った発達障がいも、自閉症などとそれぞれ似通った特性があるので、現在は『自閉症スペクトラム』と統合されています。発達障がいの特性も人によって似ていたり同じ特性が現れることがあれば、発達障がいの代表的な特性が現れない人もいます。ですので、まずは発達障がいの特性がどのように表れているのか、困難な事や得意な事はなにかという事などを出来る限り多く把握し理解することが大切です。
子どもによって発達障がいの特性の現れ方は異なりますので、その子が出来る事や苦手なこと、生活をしていく上で困難に感じることを書き出していき情報を整理してみましょう。そうすることで、現在何の支援やサポートが必要になるのかや、どう対処したら良いのかわからないことといった現状を知ることが出来ます。
3.発達障がいの子どもとの接し方とは?
育てにくさを感じることがある発達障がいの子どもですが、一緒にいる時間が長い親であってもどのように接したら良いのか、と悩むことがあります。では、実際に発達障がいの子どもとの接し方に迷った時にはどうすれば良いのでしょうか?
【出来ることや苦手なことを把握する】
先ほど紹介したことの重複してきますが、出来ることや苦手なことを把握することは非常に大切です。その子がどのようなことが苦手とするかで、どのように接すれば良いかが変わってきます。サポートを行う場合でも、その子にとって得意なことを伸ばしていくと自信へ繋がっていき自己肯定感を育むことが出来、様々な事をチャレンジする意欲を高めることが出来ます。自己肯定感や意欲を高めることで、少しの困難があっても自分の力で乗り越えようとする心を育むことに繋がります。
どのようなサポートが必要かや、どのような支援方法にするかを考えるためにも、現状や困っている事などを書き出し把握するようにしましょう。
【刺激しやすい物をなくすなど環境を整える】
これは注意欠陥多動性障害の場合には特に有効な方法です。注意欠陥多動性障害の特性として注意力が持続しにくいということがあり、視界に気になるものが入ってきてしまうと、そちらに意識が行ってしまいます。ですので、集中しなければならない時には、視界に入る場所には余計なものは置かないようにしましょう。発達障がいがなくても学習中にテレビをつけていると、自然と子どもは意識をそちらに向けてしまい学習する手は止まってしまいますよね。発達障がいの中でも、注意欠陥多動性障害の子どもの場合には、その意識が向くのがテレビといった音が出るものでなく置物などでも行ってしまいますので、環境内には必要最低限のものを揃えておくことが大切です。
その子が何に興味が移りやすいかも把握できていれば、外出していても刺激になるものを見せないように並ぶ順番を替えたり、場所を変更したりと調整することが出来ます。刺激しやすいものは出来る限り省いて集中出来る環境を整えてあげることが大切です。
【予定や行動などを視覚化する】
発達障がいの子どもに多いのが、口頭で説明しても把握するのが難しいということがあります。長々と言葉で説明されても覚えることが難しかったり、集中することが難しいために結果として話を聞かずにうろうろしてしまいます。集中して話を聞けるようにするには、話を淡々とするのではなく、予め紙に内容を要約したものを用意したり、イラストなどを用いて視覚化すると効果的です。
視覚化することで、発達障がいの子どもも情報として受け取りやすくなり記憶にも残りやすくなります。
また、1日の流れや学校に行くまでの流れなども紙に記しておくことで、時間の配分や次に何をすべきかを把握することが出来ます。自分で予定やすべき行動を理解し記憶することで、自発的に行動を起こすことが出来るようになります。社会に出たら仕事内容に対してどの程度の時間で行わなければならないか、締め切りまでに終わらせるにはどうすれば良いかということは、自分で考えて行動していかなければなりません。しかし、これは大人になってからは覚え理解することが難しくなりますので、小さい時から日常生活でトレーニングを行っていくことで、社会生活を行う時にぐんと負担を軽くすることが出来ます。
【不用意に叱るのではなく出来たことを褒める】
発達障がいの子どもはその特性から、叱られて育つことが多くなります。例えば注意欠陥多動性障害の特性の中にある『衝動性』の場合だと、友達と一緒にいる時に感情が抑えられず手が出てしまったり、『注意欠陥』の場合であれば急に道路へ飛び出してしまったりと危険であったり、相手を傷つけてしまうケースがあり親としてもつい叱ってしまいます。当然、いけないことを伝えることは大切で、自分が出来ないことを認識しトレーニングしていくことが重要になりますが、不用意に叱ってしまっていては自己肯定感が低くなってしまったり、『どうせ自分なんて…』という自己否定が生まれてしまう可能性があります。
発達障がいを持つ子どもとの接し方で大切なことは、叱ることよりも褒めることに重点を置くことです。出来ることや好ましい行動が見られた場合には、すぐに何が良かったのか、どう嬉しかったのかと具体的に褒めましょう。叱ることは反抗的な感情を刺激してしまったり、何がいけなかったのかということを理解出来ないまま、『怒られた』という感情だけが残ってしまいます。いけない事をした場合には、1対1になれる場所で何がいけなかったのかを落ち着いて説明しましょう。
しかし、どうしても親や周囲の人も感情的に怒ってしまったり、何度も伝えているのに、という思いからきつく怒ってしまうこともあります。そういった時は、落ち着いてから感情的に怒ってしまったことを素直に謝りましょう。そして、どうしなければならなかったかを伝えていきます。いつも同じように叱ることは誰でも難しいです。大切なことは叱ることを出来る限り減らしていき、その子の良い部分や出来たことを褒めていくようにするという気持ちでいることです。
褒める時に素直に自分の思いを伝えることも非常に有効です。抱きしめたり、頭をなでてあげたりとスキンシップを測りながら、自分の気持ちを伝えていくと肯定感や満足感に繋がり、心の豊かさへ繋がっていきます。
【興奮状態であればクールダウンを行ってから説明する】
こだわりが強く自分が思うことが出来なかった場合に癇癪を起したり、パニックになる場合があります。発達障がいの子どもに見られる特性の1つで、自分の思うように感情をコントロールするのが難しくその葛藤から、大声で叫んだり泣いて感情を落ち着かせようとします。
興奮状態になると、叱っても耳に届かず余計刺激してしまいますので、まずは感情を落ち着かせることが大切です。このことを『クールダウン』と言います。クールダウンをするためには、その場所ではなく落ち着ける場所へ移動したり、嫌がらなければ耳栓などをして音をシャットダウンしたり、深呼吸を促すことが効果的です。その子一人ひとりで、適したクールダウンの方法は異なりますので、どういった時に興奮状態になり、クールダウンするにはどうすれば良いかを日ごろから見つめていくことが大切です。
【その子の気持ちに沿った理解、共感を】
発達障がいの子どもは特性から、周囲から理解をされずに誤解されてしまったり、距離を置かれてしまうことがあります。特に知的な遅れが見られない発達障がいの場合だと、一見何も障害があるようには見えないものの、周りと一緒に活動することが出来なかったり、相手にストレートに言ってしまって孤立したり、中にはいじめへ発展してしまうこともあります。また、特性上どうしても出来ないことを強要されたり、周りの空気を読むことが出来ずに、環境に馴染むことが出来ず苦しむことがあります。
発達障がいの特性などを理解してもらうことは非常に重要で、周囲の理解があることで支援方法や密なるサポートを行うことが出来ます。 年齢が小さい時も同様で、発達障がいについて親をはじめ周囲の人が理解し、サポートを行っていったり、言葉に出来ない感情に対して共感し寄り添うことはその子の心の成長を促す上で大切になります。感情が上手く言葉に出来ない小さい年齢の時こそ、気持ちに寄り添い共感することが重要になります。
4.一人で抱え込まず相談することが解決の糸口になる
現在は『発達障がい』という言葉が浸透しており、発達を一番近くで見ている母親や父親から発達障がいではないかという疑問が出てくることも増えてきました。しかし、やはり軽度であれば発達障がいに気が付かないケースも多くあり、乳幼児健診や就学前健診で指摘されることもあります。
特にこだわりが強かったり癇癪を起してしまうことがある場合だと、外出することに気を使ったり、不安に感じることもあり、『どうして他の子のように出来ないのだろう』『育て方やしつけが悪かったのか』と自己嫌悪に陥り親の精神的な負担が増えてきてしまう可能性もあります。また、発達障がいに対して理解がない場合であれば、親が甘やかしているからだと責められるケースもあります。
育てにくい、子育てで悩んでしまうことが多いと感じる時には、近くにいる人や相談窓口に問い合わせをしてみることが大切です。もしも、内容により発達障害の可能性があるとわかった場合には、適切な施設や接し方、対応方法などを知ることが出来ます。友人や親、兄弟に相談してみたり、近くに知り合いがいない場合であれば、自治体の発達相談や子育ての相談窓口で話をしてみましょう。大切なことは、育てにくさを感じたり、子育てについて悩みがある場合には一人で抱え込まないことです。
5.まとめ
発達障がいの子どもはその特性から、周囲はどう接すればよいかや、興奮した時にはどうすればよいかわからないという意見が多く見られます。現在は発達障がいは決して珍しい障害ではなく、芸能人や著名人でも多くの方が公表されています。発達障がいは本人に加えて周りの人の理解が必要不可欠です。特性ということを理解してもらうことで、その子にとって最適なサポートや学びをすることが出来ます。困難な事に対してサポートやトレーニングを行っていくことで、社会性やコミュニケーション能力を培うことに繋がり、将来自立した生活を送ることへ繋がっていきます。そのためにも、まずは親や周囲の大人が、発達障がいがある人に対しての接し方や工夫の仕方を覚えていくことが大切です。
障がいがある人もない人も、お互いを尊重し合い理解を深め共に生きていくためにも、相手がどのようなサポートが必要か、どういった工夫をすれば乗り越えることが出来るのか、ということを把握しておきましょう。