訪問介護職を目指されている方で、勉強なさっていると「居宅介護」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「訪問介護」と「居宅介護」って同じような違うような、そんな印象をお持ちではないでしょうか。
そこで今回は、訪問介護と居宅介護の違いを明確にして、違いを説明できるようになりましょう。
訪問介護とは
訪問介護と居宅介護は、どちらも利用者の自宅を訪問して介護サービスを提供するものです。
違うのは、サービスを利用する対象者とサービスの体系が異なるのです。
高齢者を対象にしている介護保険法には「居宅介護」という専門の単語は載せられていません。
介護保険に載せられているのは「訪問介護」であり、利用対象者は65歳以上の第1号被保険者・第2号被保険者特定疾病等で認定を受けた40歳~64歳の方で、かつ要介護認定を受けた方です。
ここで少しややこしくなりますが、介護保険法には「居宅サービス」「居宅介護支援」という文言があります。
まず、介護保険のサービスには以下の4つの大分類があります。
1.居宅サービス
2.地域密着型サービス
3.施設サービス
4.居宅介護支援
そして、居宅サービスには以下のような種類があります。
①家庭を訪問するサービス・・・訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション
②医師の指導の元に行う管理サービス・・・訪問看護、居宅療養管理指導
・・・など。
つまり、居宅サービスの中に訪問介護があるのです。
大分類の「居宅介護支援」というのは、ケアマネジメントのことで、介護支援専門員(ケアマネジャー)の業務です。在宅での暮らしをどうマネジメントするかという意味で「居宅介護」という言葉が含まれているのです。
居宅介護とは
さて、いわゆる「居宅介護」というのは、障害者を対象にしたもので、障害者総合支援法に載せられているのです。
障害者総合支援法には在宅生活や外出等の支援をする訪問系の障害福祉サービスが以下のように分類されています。
1.居宅介護(ホームヘルプ)
2.重度訪問介護
3.行動援護(対象:知的・精神障害)
4.同行援護(対象:視覚障害)
5.重度障害者等包括支援
つまり、障害者総合支援法では、訪問系のサービスの中に「居宅介護」が含まれるのです。
「居宅介護」の利用対象者は、18歳以上の身体障害・知的障害・精神障害で障害支援区分が1以上と認定された方、及び18歳未満のこれに相当する障害児となります。
また、指定難病や特殊疾病、事故・ケガ等によって肢体障害や視覚障害となり、障害支援区分認定された場合にも利用できます。
同じサービスを提供したくても・・
実態的には、「訪問介護」も「居宅介護」も訪問介護員が、利用者の自宅に訪問してサービス提供を行うことに変わりありません。法律的、行政上において明確に区分されているのです。
法的根拠が異なると、給付体系等に違いが出てきます。それは、あるサービスを利用するまでの流れが変わってきます。
例えば「買い物」についてみてみます。
介護保険での「訪問介護」であれば、日常的な必需品であれば訪問介護職が買い物に同行することあるいは代行することは認められています。
一方の障害者総合支援法での居宅介護では、買い物同行関する支援は認められていません。買い物の援助は代行サービス(制度外サービス)が基本となります。
もしくは、障害者総合支援法を利用して買い物をする場合は、「同行援護」「行動援護」あるいは「移動支援」等による移動のための支援と、利用のための認定が必要となります。
このため、自宅訪問をしてサービスを提供するという広義的には同じ「訪問介護」であっても、どの根拠法に基づいていて、どのサービス計画に基づいているのかによって、提供できるのかどうかが別れるのです。
共生型サービス
制度改正によって、平成30年度から、介護保険と障害福祉制度に新たに「共生型サービス」が誕生しました。
これは高齢者と障害者が同一の事業所で継続してサービスが受けられるような仕組みです。事業所が介護保険か障害福祉のどちらかの指定を受けている場合、もう一方の制度の指定を受けやすく変わりました。
この動きによって、訪問介護職が利用者のニーズに柔軟に対応しやすくなる可能性がでてきた一方で、事務手続き(どのサービスが介護保険で、どのサービスが障害者総合支援なのかの分別作業)がわずらわしくなる可能性もあります。
この動きをどう活用するかは、各事業所や職員次第です。
現場の訪問介護職は、利用者の抱えるニーズに応えたくても制度上できなくて葛藤することがあります。
現場に合わせて制度をうまく活用するためにも、訪問介護職が制度のことを理解しておいた方がよいでしょう。
まとめ
訪問介護と居宅介護の違いは理解できたでしょうか?
訪問介護職が行う仕事内容、実際には制度の内容とはかけ離れたようなことのように感じるのは本音かと思います。
しかしながら、自分のしていることの法律や制度上の位置づけを知っておくことは、プロ意識を持つきっかけになるはずです。
小難しい制度のことを利用者にもわかりやすく説明できるようになれば、相談員などのキャリアも考えられますので、ぜひ今後も制度のことを知っていってもらいたいです。