本社の労務課に勤める松井さんは、パート入社から社員になった四児の母。無料の自社保育園制度を活用しながら、保育園勤務を経て、労務課の立ち上げに携わってきました。いわゆる「総務・労務」の仕事は経験ゼロ。子どもを四人育てながらのキャリアアップでした。
育児との両立に不安はなかったのか。なぜ新しい分野に挑戦するに至ったのか。当時の心境やその後の展開についてお話を伺いました。
主婦から見た社内保育の印象は、「そんなうまい話があるわけない」
− これまでのキャリアについてお聞かせください
私は大学四年生の時に子どもを授かり、新卒採用を諦めて大学を卒業しました。学生時代は学習塾でアルバイトをしていたので、産後もパートタイムで塾の仕事を続けました。トータル10年以上は働いていましたが、子育てありきの仕事なのでキャリアアップは望めません。次の仕事を探す時も、パートでできる仕事しか考えられませんでした。
塾で働いた関係から、子どもは好きでした。どちらかというと勉強を教えることより、ありのまま関わることにやりがいを感じていたので、そういう仕事ができたらいいなと思っていました。子育てしながら子どもと関わる、それなら保育園の仕事もいいなと思いましたが、生活状況を考えると事務の仕事が限界かなと考えていました。
− どのような経緯でDotlineの仕事を知りましたか?
最初は子どもの預け先を探していました。それが決まらないと仕事も決められなかったので。保育料を抑えられるところを探していて、Dotlineが運営する「みらいのまち保育園」を見つけました。0−2歳児中心の小規模保育で、企業主導型の新しい保育園でした。
驚いたのは「グループ社員は無料で利用できる」って書いてあるところです。「実質無料」を謳っている保育園は他にもありました。でも結局何かしら費用がかかるようになっていたので、「そんなうまい話があるわけない」って思いました。
ただ、もし私がこの会社で働いて、子どもも預けられるなら、願ったり叶ったりです。話を聞くだけならいいかもと思って、まずは問い合わせを送りました。面接に伺う時はちょっと緊張しましたね。
− 面接を受けてみていかがでしたか?
もともと私は人見知りな性格だったのですが、面接を担当してくれたスタッフさんが丁寧にヒアリングをしてくれました。子どもの様子やライフスタイルなど、こちらの状況をとても親切に把握しようとしてくれたおかげで、安心して話すことができました。そして、本当に無料でした。(笑)
私の生活状況に合った園選びや働き方を提案してくれたり、実際に働いている人の事例を紹介してくれたりしたので、「ああ、ここなら安心できそう、ここで働いてみたい」って思えました。保育園の仕事ができて、我が子も近くで見守れる。しかも保育料はかからない。交通費も全額支給。あまりにも理想的でした。
次々と打ち砕かれていく「あるわけない」の数々
− 実際に働いてみていかがでしたか?
それが、入職二ヶ月でまた子どもができたんです。せっかく念願叶って保育園で働き始めたのに、また休むことになる。家族が増えることは嬉しかったのですが、保育園にも会社にも申し訳なさを感じました。さすがに辞めるしかないか、と残念な気持ちで事務局に報告に向かいました。
すると、「戻ってくるなら産休取ってもらっていいですよ」って。働いてまだ二ヶ月なのに! 「そんなうまい話が……」と思いましたが、やっぱり本当でした。(笑)
結局出産して二ヶ月で復職し、今も働かせてもらっているのですが、その後もDotlineでの仕事は「あるわけない」の連続でした。
− 次の「あるわけない」は?
産休の一ヶ月前、本社の総務(現・労務課)の仕事を手伝うことになりました。行政への届出や従業員の労務管理の仕事で、完全に未経験の分野でした。最初は教えてもらいながらの仕事でしたが、これが意外とおもしろかったんです。
学習塾の仕事も含め、それまで私は現場仕事しかしたことがありませんでした。塾では生徒と直接関わる立場、保育園では調理を担当していました。どちらもその時々の関わりに楽しさややりがいを感じていましたが、生徒や園児は入れ替わります。自分の仕事が会社を良くしている実感はありませんでした。
労務管理の仕事は、長期的な視点で会社の体制を整えていきます。積み上がっていく実感があって、自分の居場所ができていくようでした。「ここで働けると、長期的なキャリアを諦めなくていいのかも……」次第にそんな想いが湧いてきて、復職後は本社への異動を希望しました。もともと保育園のパート勤務での採用ですし、総務も未経験なので、さすがに無理があるかなと思いましたが。
結局、復職して子どもが落ち着くまでは保育園で働き、それから本社に配属されることになりました。
最大の「あるわけない」は、自身のキャリアアップ
− 本社勤務で、育児との両立は難しくなかったですか?
自社保育があるのは大きかったですね。他の社員さんも活用されていたので、制度の使い方をいろいろ教えてもらいました。子どもの予定と仕事が重なる時は、社員さん同士で助け合うこともあります。日々のお迎えからイベントの調整まで、お互いさまの精神でやってます。子どもがぐずったり体調を崩したりして予定が崩れる時もありますが、そういう時はフレックス制で融通をきかせてもらうこともあります。
母になるとどうしても子育て中心の生活になるので、そもそも仕事で挑戦できるとは思っていませんでした。でもここまで環境が整っていると、「あれ、もしかして諦めなくてもいい?」って思えてきます。結局本社に配属されてから私も正社員になり、労務課の立ち上げをはじめ未経験の業務にたくさん挑戦させていただくことになりました。
− キャリアアップへの再挑戦に不安はなかったですか?
幸いなことに、まわりにパートから社員になった人や、時短社員制度を利用している人がいました。それに労務の仕事では、さまざまな社員さんの個人情報を取り扱うことになります。「あ、こんな働き方ができるんだ!」「え、こんな制度あったの?」って、労務の実態を知ることができました。こんなに融通がきくなら、自分にもできるかもしれない、と思えたことも挑戦の後押しになりました。
会社の方針としても、風通しの良さをとても大切にしています。思ったことが気軽に意見できる雰囲気があって、相談や提案がしやすいです。実現できそうならまずやってみようってなるので、実行や改善がとても早いです。それもあって挑戦への背中を押してもらえたように感じています。
「あるわけない」を、制度や環境から乗り越えていく
− 今後に向けた展望はありますか?
今は子どもと過ごす時間と仕事とのバランスがとても良くて満足しています。最初は「そんなうまい話があるわけない」って思っていたのが、今やその「うまい話」を支える側になっています。これからは、会社のみんなが少しでも働きやすくなるように、労務管理の立場から環境を整えていけたら嬉しいです。
これから一緒に働くことになるであろう人たちも、私のように最初は不安や心配がたくさんあると思います。仕事の幅に限界を感じていたり、未経験の難しさにぶつかったりするかもしれません。でも環境や制度が整っていれば、意外と実現できることはたくさんあります。仕事も家庭も諦めなくていいように、私も自分の立場で力になれたら嬉しいです。
「そんなうまい話があるわけない」、その壁をこれからも越えていきたいですね。