訪問介護は利用者の自宅を訪問し、利用者の望む生活を援助します。
しかし、利用者の身の安全が脅かされないようにしなければなりません。
その安全の管理は、サービス計画に盛り込まれていますが、実際には訪問介護職が行うことです。高齢者の場合、一度の怪我が取り返しのつかないこともあります。
本記事では、事例を元に現場でどのような危険があるのかをあらかじめ知って頂きます。
現場で起こりうる危険
・慣れているはずの環境の中に潜むリスク
在宅介護の現場での事故ケースとしてとりわけ多いのは転倒ですが、ほかにも危険は潜んでいます。
段差を解消するための改修を行なっていたとしても、カーペットや敷物がわずかにめくれていることがあります。ここで、足を取られてしまうケースがあります。また、電気コードやカーテンの端に足を引っ掛けるなどのケースもあります。日々の生活の中で、本人や家族が無意識にリスクをやり過ごしていて、あるとき怪我につながることがあるのです。
・福祉機器に潜むリスク
生活環境改善のために住宅改修を行い、福祉機器の導入を行う場合があります。
しかし、改修した構造に慣れていなかったり、機器の使い方を習熟できていなかったりすることが多々あります。訪問介護などのサービスが自宅に入っていない間に誤った使い方をして、事故につながるケースがあります。
・薬のリスク
訪問介護職が別様で少しばかり目を離しているときに、死角ができてしまい、薬の誤嚥や誤薬が起きるリスクがあります。医療知識に乏しい介護職の場合ですと、異変を目撃しても重大性に気づかないことがあり、大きな事故に結びつくということも起こりえます。
・物損事故
訪問介護の生活援助中で、掃除をしていた際に棚の物を落とす、食器を割ってしまうといったケースがよくあります。恐ろしいことですが、布団をストーブの近くに干していて、表面を焦がしてしまったというケースもあります。
また、日常的に使用している用具や福祉機器が老朽化しており、サービス提供時に壊れる場面も見受けられます。事故の責任所在は明確にできませんが、これらもリスクです。
・虐待
深刻なリスクとして、家族による本人への虐待があります。
虐待の多くは、家族側が抱え込んでいるストレスにあると考えられ、介護職や事業所側がそれをリスクとして認識することが大切です。解消できるように対処していくことが、事故防止につながる事になります。
リスクを減らすには
物損事故や虐待などに共通して言えることは以下の点があります。
・外部の支援者による目が行き届かない
・目が行き届いても介護職間で情報共有されていない
これらの状況がリスクを大きくしていくのです。
そのため、この外部からの目が行き届かない状況をいかに視覚化するかが、大事でしょう。
見えにくいリスクを把握するには、2つのポイントがあります。
1つ目は、目の前の事象から、水面下で起きていることを洞察することです。
そのためには異変がないか感知する意識をもって訪問することが前提です。
その意識を持った上で、利用者宅に入ったとき、「何かいつもと違う」と感じたとしましょう。
利用者の表情や言動、部屋の臭い、異様な音、利用者の体温など、視覚からの情報だけでなく五感で察知していくことが必要です。ここで感じることは、訪問するまでの生活の水面下で何かが起こっていることを示唆しているかもしれないのです。
利用者の表情や言動にいつもよりも力がないと感じた場合、「よく眠れなかったのかもしれない」「いつもより体調が悪いかもしれない」といったことが推察できます。利用者本人から訴えがなかったとしても、さまざまな可能性を頭に入れつつ事業所に報告することが重要です。事態が悪化する前の対処が可能となってきます。
2つ目のポイントは、介護職同士、事業所、医療や看護などの他の職種との情報共有や連携を進めることです。できる限りリアルタイムでの情報共有が望ましいです。
在宅生活で複数のサービスを利用されている場合、さまざまな専門職がそれぞれ異なる視点で情報収集していくことになります。様々な専門職が、その場面だけで利用者を見ても、真の状態像はなかなか把握できません。
そこで、それぞれが持つ情報をリアルタイムに近い形で共有することが必要になります。最近はICTの活用で、ネット上での利用者情報を共有できる仕組みができるようになりましたので、活かしていってもらいたいです。
リスクを最大限減らすために
リスクを減らすために利用者宅に訪問したら、まず以下のような環境チェックを行いましょう。
・利用者の動線上にある障害物は取り除く
・福祉用具を使う前に、正常に機能するかをチェックする
・入浴介助の前に脱衣所の室温チェック、浴室の床が滑りやすさなどの確認
地道なことですが、これらのことが事故リスク要因を減らしていく重要な作業になります。
ひとつの事故が起きるまでには300の異常があるといわれています。
このことを意識して、日々取り組んでいくことが最大のリスクマネジメントなのです。