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自傷行為や噛みつきは『強度行動障害』の可能性も?!

強度行動障害という言葉をご存知ですか?強度行動障害という障がいはあまり知られていないものの、全国には8000人以上いると言われている障がいで、家庭内でもその対応に悩んでいる人が多くいます。強度行動障がいは家庭内で行動を緩和することは難しく特別な支援が必要になります。まずは、強度行動障がいについて知ることからスタートしましょう!

強度行動障害は約8000人程度いると言われている

あまり聞き慣れない言葉の『強度行動障害』。強度行動障害は医学的に決められた言葉ではなく、福祉の観点から作られた言葉になります。強度行動障害の定義としては『精神的な診断ではなく、直接的他害(噛みつき、頭突き)や間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難なものであり、福祉的な支援が必要』(*引用『行動障害研究会:1989年』)とされています。要するに、噛みつきや頭突きといった行動や、自傷行為などが一般的には考えられにくい頻度で表れるために、家庭のみで対処することは難しく、福祉等の特別な支援が必要な障がいになるということです。以前は強度行動障害という言葉はなく、1989年に初めて使われるようになりました。

強度行動障害はあまり知られていない障がいですが、全国には約8000人程度いると言われています。しかし、実際に強度行動障害と診断されていない人も合わせると、もっと多くの人数がいると考えられています。

 

強度行動障害の特徴とは

自傷行為

・自分の顔をひっかく
・頭を激しく叩く
・壁に肘やひざを打ち付ける
・爪をはいでしまう
・髪の毛を無理やり抜いてしまう
・自分の腕をきつく噛んでしまう等

他害行為

・人に噛みついたり頭突き、叩いたりしてしまう
・髪の毛を引っ張ったり目を突いたりする等

強いこだわり

・強くいっても拒否し続ける
・気になることがあるとそれが解決するまで動かない等

物を壊す

・ガラスやドア、家具などを壊していってしまう
・自分が身に着けている服や眼鏡なども壊す等

睡眠障害

・不眠が続いたり、夜中に奇声や大声で叫ぶ
・昼夜逆転してしまい眠れない等

食事のこだわり

・偏ったものしか食べなくなり他は拒絶する
・食べてはいけないものを食べようとする等

排泄行為の異常

・排泄物を壁に塗ったり、食べようとしたりする等

著しい多動

・危険な場所に登ったり周りを徘徊する等

騒がしさ

・奇声を発したり何時間も泣き続ける等

粗暴

・周りが注意すると爆発的に怒りだし周りに危害が及ぶ等

 

このように強度行動障害の場合には、一般的にはあまり行わない行動が見られることがあり、この行動がどのくらいの頻度でどのくらいの強さで表れるかが判断の基準になっています。強度行動障害は周りからみると困らせているように見えますが、実際には本人が『困っている』から助けてほしいというサインです。

周囲からの刺激が強かったり、自分が伝えてたいと感じたことを伝えることが出来なかった、間違って伝わってしまった時のストレスが原因で行動に表れてしまうと言われており、お互いに相手のことを理解出来なかったことが要因と考えられています。

強度行動障害は自閉症スペクトラムの人が多く発症していますが、自閉症スペクトラムの場合コミュニケーションが上手く出来ないために、そのもどかしさが強度行動障害を誘発しています。

 

強度行動障害は自閉症スペクトラムの人が多いと言われている

行動的な課題が多い強度行動障害ですが、この障がいの多くの人は自閉症を併せて発症していることがあります。では、自閉症スペクトラムとはどのような障がいなのでしょうか?

 

【自閉症スペクトラムとは】

自閉症スペクトラムとは、先天的な中枢神経や脳の機能が何らかの原因でうまく動作することが出来ないために、様々な行動や考え方に偏りが出てきてしまうことです。自閉症スペクトラムは小さい年齢から、会話が成り立たなかったり、積み木や車などを規則的に並べて遊び続けるなどの行動が表れてきて、3歳程度には診断されます。以前は知的な遅れがある自閉症と、知的な遅れが目立たないアスペルガー症候群などの他の発達障がいとは区別されていましたが、自閉症といっても特徴が目立つ人と目立たない人がおり個人差がとても強くなり、小さい時に顕著な特徴が表れる人もいれば、『少し変わった子』と周りに思われたまま成長していき、大人になってから自閉症スペクトラムと診断された人もいます。

この幅広い特徴で境界線がはっきりとしないために、多くの特徴を広い意味として捉えるために自閉症スペクトラムという考え方に変わってきました。

自閉症スペクトラムと診断される方の多くはコミュニケーション能力が乏しかったり、社会性が低くなる事があり、周りの環境や理解が必要不可欠になります。

 

このように、自閉症スペクトラムは知的な遅れがあったり、コミュニケーションが苦手であったり周りの人の気持ちや考えを理解することが難しくなります。また、自分の気持ちや思いを理解してもらえにくく、人と通じ合えず関わっていくことがストレスになることが多くあります。

特に、自閉症スペクトラムの中でも知的な遅れが目立たないもののコミュニケーションが上手く出来ない人の場合であれば、周りは障がいがあることに気が付きにくくなり、『身勝手な人』『わがままな人』という風に見られたりと辛い状況に置かれてしまいます。本来であれば、その人それぞれにあった方法で生活を改善していくと共に、周りの人の理解を得て関係を形成していくのですが、その理解が得られないままだと常に誤解され批判されたままになってしまいます。自分の思いを伝えたいのに上手く伝えることが出来ないというストレスが溜まっていき、強い不信感や嫌悪感を高めてしまうことで強度行動障害を引き起こしてしまうのです。先ほど述べたように、強度行動障害とは『自分の思いに気が付いて欲しい、助けて欲しいサイン』と捉えることが大切です。

 

強度行動障害かもしれないと思った時にはどこへ相談すれば良い?

強度行動障害は、自閉症スペクトラムや知的障害と診断されている人に比較的多く見られますが、実際には知的障害や自閉症スペクトラムと診断されていない、もしくは診断されていても非常に軽度であっても見られることがあります。つまり、障がいの重度・軽度に関係なく強度行動障害いは起こる可能性があるということになります。

自分を傷つける、周りの人や物を傷つける、睡眠障害がある頻度が多くなると強度行動障害の可能性が高くなりますが、実際に強度行動障害かもしれないと思った時にはどこへ相談すれば良いのでしょうか?

先述の通り強度行動障害は医学的な診断名ではなく、あくまでも福祉や行政の観点から名付けられています。ですので、強度行動障害かもしれないと感じた時には、病院よりも自治体の相談支援事業所に連絡し相談しましょう。もしも、自閉症スペクトラムとして施設に通所している場合には、そちらに相談するのも1つの方法です。強度行動障害の本人は自分で連絡していくことは困難ですので、家族や保護者が連絡し相談しにいきましょう。

相談支援事業所では、日常生活の内容から本人や家族が困っている内容、気になる行動の頻度など多くのヒアリングが行われます。ヒアリングを通してその人に一番適した施設やサービスを受けられる事業所を一緒に訪問したりサポートを行ってくれます。自傷行為や他害行為が強く表れている場合には、医療との連携も必要です。医療となると精神科への入院や治療が必要になることがあります。保護者としては複雑な気持ちになるかもしれませんが、自傷行為や他害行為になると危害を加えてしまうことになりますので、興奮状態を落ち着かせることが大切です。そのためには、周りの刺激から離れた静かな場所で気持ちの安定を図り徐々に行動を抑えていくきっかけにしていきます。

強度行動障害は専門的な支援が必要不可欠です。医療のみでも福祉のみでもなく、それぞれの良い面をバランスよく利用することで、強度行動障害が落ち着く可能性があります。地域に支援を行いつつ、医療も活用していき、本人も家族も周りの人も苦しまず本来の生活を送ることを目標にサポートしていきましょう。

 

強度行動障害の人と向き合うためには『障がいについて理解する』こと

自分を殴ったり、髪の毛を抜くといった自傷行為から、相手に頭突きをしたり噛みついてしまう他害行為など行動面で顕著に表れてくる強度行動障害。強度行動障害の人と私たちが向き合い、楽しく暮らしていくためにはどのように向き合うべきなのでしょうか?

強度行動障害は専門的な支援に加えて、周りの理解が非常に大切になります。今まで自分の思いを理解してもらうことが出来ず、否定されたり誤解されることが多くなり不信感が高くなってしまっているので、周りが今まで気が付くことが出来なかった本人の気持ちに気が付くことが相互理解の第一歩になります。

それぞれの行動を起こす前段階で何らかのサインがある場合には、その段階で予防できるように気持ちを落ち着かせるために静かな部屋へ移動したり、時間を短くして簡単作業をすることで、自分が出来た事を増やしていき達成感や自信をつけていくことも効果的です。日常生活でも多くの工夫やサポートを行うことで、強度行動障害の頻度を少なくすることが可能になります。

強度行動障害の人と向き合うためには、福祉と医療、家族、そして本人と密に連携を取り合っていくことが大切です。

 

まとめ

強度行動障害はあまり聞きなれないものの、全国には強度行動障害に悩む人がたくさんいます。自閉症スペクトラムや知的障害と合わせて起きていることが多いですが、症状の重さには関係なく表れることもありますので、知的障害が強いから強度行動障害も起きるのでは等と固執した考えはしないようにしましょう。

本来であれば自分の気持ちをすんなりと相手に伝えられるものが、障がいなどが原因で相手に伝えることが出来なかったり、理解してもらうことが出来ない経験が多いために嫌悪感や不信感が高くなり行動に表れてしまう強度行動障害。1番辛い思いをしているのは本人で、『助けてほしい』というサインが行動に表れているということを理解することが大切です。強度行動障害がある人への理解を深めていき、周りの人がサポートしていくだけでなく施設や医療の連携をしっかりと行っていくことで、行動を緩和していくきっかけにつなげることが出来ます。

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