てんかんという病気は、周りが病気について理解していくことがとても大切で、どのような特徴や症状があるのかをきちんと知ることで、てんかんがある人と一緒に楽しく暮らしていく方法を見つけることが出来ます。てんかんは発作が多いのでつい対応に慎重になってしまいますが、落ち着いて対応をすることが大切です。では、てんかんの人と一緒に仲間として暮らしていく上で、対応の仕方から、大切なことを解説します。
てんかんは発作が頻繁に起きる病気
てんかんは発作が頻繁に起こる病気ですが、脳の中で神経細胞の情報伝達の際に使われる電気信号が乱れてしまうことが原因で発作が起きてしまいます。
脳のどの場所で電気信号の乱れが起きるかで症状も異なりますので、全身が痙攣したりピクッと筋肉が収縮する発作から、手足など体の一部がガクガクと震えてしまう部分発作まであり、症状の現れ方は個人差が大きくなります。
意識がある中で発作が起きる人もいれば、意識がないまま発作が起きているのにも関わらず周りから見ると発作だと気が付かない場合もあります。
けいれんといった1つの症状があるために、『てんかんだ』と周りが決めつけるのではなく、必ず専門医による診断を受け治療を開始しましょう。
てんかんの発作の時はまず冷静になることが大切
発作はいつどんな時に発作が起きるのかはわかっていません。寝不足や体調がすぐれない時などは発作の発生するリスクは高くなると言われていますが、実際にどの程度リスクがあるかは明確にはわかっていません。ですので、元気だったのにも関わらず目の前で急に発作が起きて倒れてしまうこともあります。発作で突然倒れてけいれんしていると、いったい私たちはどうすれば良いのかパニックになってしまいますよね。てんかんという病気は発作が起きやすいとわかっていても、いざ発作が起きると誰しもが慌ててしまいますが、まずは一旦落ち着き冷静になることが大切です。そして、てんかんのある子の様子を確認しましょう。
学校などで発作が起きた場合には、子供達は教師等周りの大人に助けを求めに行くと共に、体をぶつけないように机や椅子を速やかに片付けます。外でてんかんの発作が見られたら、大声で叫び助けを求めるとともに、救急車に連絡し指示を仰ぐようにしましょう。発作が5分以上起きている場合や、5分以内に何度も意識がない発作をしている時は、命の危険があるけいれん重積発作の可能性がありますので注意が必要です。
発作がおきた時にはベルトや服のボタンを外して呼吸をしやすくします。発作のいきおいで吐いてしまったり、つばで気管を詰まらせないために顔は横向きにしましょう。そのまま救急車が到着するのを待ちます。意識が戻った後も発作を起こした後は、非常に体が疲れていますので、ゆっくりと出来る場所に移動しましょう。
発作の時にしてはいけないこととは?
てんかんの発作が起きた時には、体を激しく揺さぶったり、何度も大声で名前を呼んではいけません。目の前で急に倒れてしまうと、パニックになってしまいますが、倒れている人の体は絶対に動かさないようにしましょう。発作で倒れたと言っても、発作が本当にてんかんの発作かどうかは判断出来ません。発作をおこしている時に、体を揺さぶったりしてしまうと食べたものを吐いてしまう危険があり、吐いたものが気管に詰まると息が出来なくなりますので、さらに危険が高くなってしまいます。
また、けいれんをしていたり手足をばたばたとしている発作の場合は、体の周りに危険な物がないか確認し、そのまま手足を押さえ込んだりしてはいけません。無理に押さえ込むと、双方共に怪我をしてしまう可能性があります。
発作が起きた時はとにかく冷静に対応することが大切です。無理に動かしたり、体を押さえたりすると倒れている人も対応している人も危険がありますので注意しつつ様子を見るようにしましょう。けいれんがてんかんから来るものか判断できない場合には、速やかに救急車を手配するようにすると安心です。
食事中や入浴中に発作が起きたらどうするの?
食事中や入浴中にも発作が出てくることがあります。食事中や入浴中に発作が起きた場合にも、冷静に対処出来るように状況を判断することが大切です。
食事中に発作が起きた場合には、まずスープなど熱い器がある場合は速やかに体の側から取り除きましょう。そして、陶器などの割れやすい器がある時も同様で、発作を起こしている人の周りから移動させます。発作を起こした時に、勢いよく手を伸ばして器をひっくり返してしまい火傷や怪我をしないように配慮しましょう。食べている時に発作が起きてしまうと、口の中のものはそのままのことが多いです。食べものが詰まってしまい危険ではないかと心配になるかもしれませんが、口の中に食べ物が入っていて詰まることはまずないので発作が治まるまでそのままで大丈夫です。無理に口を開けようとしたり、中の食べ物を出そうとするとかえって怪我をする可能性がありますので注意しましょう。
入浴中も発作が起きるとパニックになりやすい場所の1つです。特に湯舟に使っている状態で発作を起こしてしまうと、そのまま溺れてしまう可能性があるので早急に対処しなければなりません。浴槽に使った状態であれば息をしやすいように顔をあげるなど姿勢を正します。そして、浴槽の栓を抜いて安全を確保しそのまま意識が回復するのを待ちましょう。
年齢が小さい時は一緒にお風呂に入るので発作が起きても対応出来ますが、年齢が上がってくると1人でお風呂の入るので発作が起きても気が付きにくくなってしまいます。お風呂に入る時間を決めておくなど、前もって発作が起きてもすぐに発見できるように工夫しておくことが大切です。また、お風呂のお湯は少なめにはっておくことも発作の時の予防策になります。
発作が起きた後の対応について
てんかんがある人は発作後に深い眠りについてしまう人がいます。てんかんの発作は脳が過剰に反応しているために起こりますので、脳はかなり疲れてしまいます。ですので、発作の後にそのまま眠ってしまうことがありますが、その場合には無理に起こさずにそのまま寝かせてあげましょう。
全般発作はもちろんのこと、部分発作であっても脳が疲れていることは同じです。ぐっすりと眠ると回復することが多いので、そのまま休ませてあげることが大切です。
また、てんかんの発作後は周りの人や特に子供達への指導はきちんと行うようにしましょう。てんかんの発作はけいれんの様なものから、体の一部分が震えたり白目をむいてしまうなど様々です。その発作の様子を見て周囲の人や子供達がてんかんのある人のことを、真似をしてからかったりしないようにしましょう。てんかんという病気が原因で無意識の内に発作が起きてしまうことをきちんと説明した上で、自分がその立場であればどうしたらよいか、どんな気持ちになるかということをしっかりと伝えていかなければなりません。
てんかんのある人と私たちが楽しく暮らすためにすべきこと
てんかんは発作が頻繁に起こるために、一緒に生活を送ることは難しいのではないかというイメージがついてしまいますが、てんかんは病気とうまく付き合っていくと共に治療をきちんと行っていくことで、私たちと変わらない生活を送ることができます。
しかし、発作があったり生活を送る上で私たちが気を付けなければならないことはいくつかあります。てんかんのある人と私たちが楽しく暮らしていくためには、どのような事を意識し、気を付けなければならないのでしょうか?
【てんかんのある人の気持ちを理解しよう】
てんかんの発作は急に起こる上に、けいれんなどが起きると周りはパニックになってしまいます。しかし、実際発作を起こしている本人は、意識がなくなっているのでどんな状態で発作が起きていたか、どんな動きだったかを知ることは出来ません。ですので、発作が起きたものの『いつものこと』と何とも思っていないことが多くあり、周囲の人とてんかんがある人とは、発作に対して気持ちの差が大きいことがわかります。
また特に子供の時は、発作に対して周りからいろいろと言われることが多く、中には発作の真似をしてからかったり、いじわるをしてくる子供もいます。そのまま成長していくと友達や学校に行きたくないと思うようになったり、『どうして自分だけがてんかんなのだろう』と思い悩むことが出てきます。楽しい学校生活を送ることが出来たのに、てんかんの発作をからかわれたり距離を置かれてしまうと人の心はとても傷付きます。ですので、まずはてんかんのある人の気持ちを理解するように努めることが大切です。てんかんの病気について知り、相手の立場になって考えることが出来るようになると、てんかんの人と私たちが楽しく自然に暮らすことが出来るでしょう。
【楽しい学校生活を送るために工夫しよう】
てんかんがある人はどうしても、発作に対して恐怖心を持ってしまいます。特に学校では友達の目があるので、発作がおきないかとヒヤヒヤしながら生活している人も多いでしょう。しかし、学校生活は行事も多くあり友達同士で楽しく生活することが出来るので、なるべく参加できる行事等は参加していくようにしましょう。
てんかんの発作が起きる時は完全に知ることは出来ませんが、ある程度原因となることを取り除いたり、工夫していくことで、楽しい生活を送ることが出来るようになります。そのためには周りからの理解が必要不可欠になります。元気いっぱい心身共に健康な生活を送ることも、てんかんの治療としてはとても大きな効果があります。
【薬を飲むことや体調について理解をしよう】
てんかんは手術や薬を1回飲むだけですぐに治すことが出来る病気ではありません。毎日抗てんかん薬を飲むことで、発作を抑えることが出来、それが完治への近道になります。薬を毎日決まった時間に飲むだけで治るなら、と思うかもしれませんが、どれだけしんどい日でも何か大切な仕事があっても、必ず忘れずに飲まなければならないということはとても大変な事です。
特に学校では林間学校や修学旅行など何日か泊まりでの行事もありますので、そんな時には薬を持っていき飲まなければなりません。薬を飲んでいるということを隠したい人もいますので、薬に関して深く追求しようとしたり、薬を飲んでいることに関して冷やかしたりしないようにしましょう。てんかんを治すためには、薬を飲むことは絶対に避けては通れません。そのことをしっかりと理解することが大切です。
また薬には副作用があることが多く、抗てんかん薬の場合には眠気やだるさなどの症状が出ることがあります。抗てんかん薬を飲んだ日には、副作用で仕事が手につかなかったり、保健室で休まなければならないことがあるということもきちんと知っておきましょう。
まとめ
てんかんは発作が起きてしまいますので、対応については常に冷静であることが大切です。発作が起きると周囲の人は驚きパニックになってしまいますが、てんかんの発作は時間が経つと自然に治まりますので、吐しゃ物などで気管を詰めないように注意しながら様子を見ましょう。しかし、てんかんの発作かわからない場合には、速やかに救急車の要請を連絡し指示に従います。
てんかんの症状や特徴を正しく理解することで、対処方法から日常生活での注意点などを知ることができます。てんかんは決して珍しい病気ではないからこそ、病気について理解し共に生きる仲間として暮らしていくことが大切です。