障害がある方に支援を行うための法律である、障害者総合支援法に定められて適用される障害福祉サービスには、大きく分けて『介護給付』と『訓練等給付』があります。
中でも『訓練等給付』は、障害がある方が自立した生活や地域社会へ移行していくために必要な訓練を行うためのサービスになり様々な種類があります。
今回は障害福祉サービスの『訓練等給付』のサービス内容や対象者について詳しくまとめました。
『訓練等給付』の利用を検討している方は是非参考にしてください。
障害福祉サービスの『訓練等給付』とは?
障害福祉サービスの中でも『訓練等給付』は、障害がある方が自立した生活や社会生活を送るために必要な訓練の機会を提供するサービスです。
介護が必要な方に焦点をあてたサービスの提供を行うのが『介護給付』なのに対して、『訓練等給付』は自分らしい生活を営むためや、就労を行うために必要となるスキルを身につけるための訓練を行うために給付されます。
同じ障害であっても、必要な支援は異なりますので、「仕事をしたい」と感じた時に、その利用者にとって最適な訓練やサポートを行う必要があります。
訓練等給付では、日常生活の中で困難に感じる動作などを理学療法士や作業療法士などにより訓練を受けたり、就労を行うために必要な知識や能力を訓練する機会や環境を支援していきます。
また、就労に関しては就職活動から就職後の職場で生じる問題や悩みなどの相談に至るまで総合的に支援を行いますので、障害がある方の地域社会への移行の手助けを行うことも出来ます。
【訓練等給付】障害福祉サービスの内容や対象者一覧
①自立訓練(機能訓練)
障害者支援施設や障害福祉サービス事業所に通所して、当該障害者支援施設、障害福祉サービス事業所、利用者の自宅にて身体機能や生活能力の向上を目指すための訓練になります。
自立訓練(機能訓練)では、理学療法や作業療法だけでなく利用者にとって必要なリハビリテーションの提供を行ったり、生活などに関する相談や助言なども含めて支援を行います。
家事の訓練や歩行や食事の訓練のみならずコミュニケーションを図ったりと、生活の場を地域社会へも向けていけるようにサポートします。
対象者
・障害を抱えている方で、地域生活を営む上で身体機能、生活能力の維持や向上等のために、一定の支援が必要となる方。
自立訓練(機能訓練)では、以下の様な方が対象になります。
①入所施設、病院を退所、退院した方の中で地域生活への移行などを図る上で、身体的リハビリテーションの継続や身体機能の維持、回復といった支援が必要な方。
②特別支援学校を卒業した方で、地域生活を営む上で身体機能の維持や回復などの支援が必要となる方。
②自立訓練(生活訓練)
知的障害や精神障害がある方が、障害者支援施設や障害福祉サービス事業所、自宅において自立した生活を営むために必要となる訓練や、生活における相談や助言といった支援を行います。
機能訓練とは異なり、日常生活を送る上で必要な身の回りの基本的な事に関して訓練を行い、地域生活への移行を目指し支援します。
自立訓練(生活訓練)では施設や病院に長期間入所していたり、長期入院を行っていた方が対象になります。
対象者
・障害を抱えている方で、地域生活を営む上で生活能力の維持や向上等のために、一定の支援が必要となる方。
自立訓練(生活訓練)では、以下の様な方が対象になります。
①入所施設、病院を退所、退院した方の中で地域生活への移行などを図る上で、身体的リハビリテーションの継続や生活能力の維持、回復といった支援が必要な方。
②特別支援学校を卒業した方で、地域生活を営む上で生活能力の維持や回復などの支援が必要となる方。
③宿泊型自立訓練
知的障害や精神障害を抱えている方が、居室その他の設備の利用を行うことで、日常生活能力を向上させるための支援や生活等に関する相談や助言といった支援を行います。
1日を通して自立訓練(生活訓練)を行い、自立した生活を営みつつ地域生活への移行を向けて関係機関との連絡も行っていきます。
対象者
・自立訓練(生活訓練)の対象者の中で、日中一般就労や障害福祉サービスを利用している方で、地域移行へ向けて一定期間、居住の場を提供し、帰宅した後に生活能力の向上や維持のための訓練を行う方
④就労移行支援
障害を抱えている方の中で、就労を希望しており通常の事務所に雇用されることが可能と見込まれる方に対して、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供を行います。
また、就職活動に関して必要となる知識を習得したり、能力を向上するために訓練を提供したり求職活動に関する支援も合わせて行っていき、より良い就職活動を行えるようにします。
また、就職活動における悩みの相談や助言、利用者に合わせた職場の開拓、就職した時に職場に馴染めるようにサポートも行います。
対象者
・就労を希望する65歳未満で障害を抱えている方で、一般の企業や通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方。
具体的な対象者は以下になります。
①就労を希望しているものの、一人で就労することが困難であるために、就労に必要な知識や技術の習得を行ったり、就労先の紹介や就職後の相談や助言など総合的にサポートを行うことが必要である方
②あん摩マッサージ指圧師免許やはり師免許、きゅう師免許などを取得することで就労を希望している方
*就労移行支援は基本的に65歳未満が対象になりますが、65歳に達する前日に就労移行支援に係る支給決定を受けていた方は65歳以上であっても利用することが出来ます。
また、入院といったやむを得ない事情により障害福祉サービスに係る支給決定を受けていなかった期間は除きます。
⑤就労継続支援A型(雇用型)
障害をかかえている方の中でも、一般企業に就労することが困難な場合に、雇用契約に基づき就労する者につき、生産活動の機会の提供を行ったり、その他の就労に必要な知識や能力の向上を行うために、必要な訓練を提供し支援を行います。
就労継続支援A型の場合は、就労に必要な知識や能力を高めることが出来た場合には、一般企業等への就労の移行を目的とします。
対象者
・企業に就労することが困難な方で、雇用契約に基づき継続的に就労することが可能な方。
具体的な対象者は以下になります。
①就労移行支援事業を利用したものの、企業への雇用に結びつかなかった方
②特別支援学校を卒業をし就職活動を行ったものの、企業等への雇用に結びつかなかった方。
③企業等を離職した方といった、就労経験がある方で現在雇用関係がない方。
*就労移行支援は基本的に65歳未満が対象になりますが、65歳に達する前日に就労継続支援A型に係る支給決定を受けていた方は65歳以上であっても利用することが出来ます。
また、入院といったやむを得ない事情により障害福祉サービスに係る支給決定を受けていなかった期間は除きます。
⑥就労継続支援B型(非雇用型)
就労経験がある障害者の方で、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者の中で年齢や心身の状態,その他の事情により引き続き事業所に雇用することが困難になった方に対して、生産活動の機会を提供したり、知識や能力の向上のために必要な訓練を行う障害福祉サービスです。
就労継続支援B型を利用し生産活動や就労に必要となる知識や能力が高まった場合には、就労継続支援A型や一般企業への就労を目指し支援を行います。
対象者
・就労移行支援事業等を利用したものの、一般企業などの雇用に結びつかなかった方や、一定の年齢に達している方などで就労機関などを通じて生産活動にかかる知識や能力の向上や維持が期待される方。
具体的な対象者は以下になります。
①就労経験がある方であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった方。
②50歳に達している方、または障害基礎年金1級受給者。
③①、②のいずれにも該当しない方で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている本事業の利用希望者。
④障害者支援施設に入所している方については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案の作成の手続きを得た上で、市町村により利用の気見合わせの必要性が認められた方。
⑦就労定着支援
生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援などを利用して、事業所に新しく雇用された障害者の就労の継続を図るために、企業や障害福祉サービス事業所、医療機関などと連絡調整を行い連携を図り、就労の際に生じる悩みなどに支援を行います。
新しく雇用された職場へ馴染めるように支援したり、就労環境が変わることで日常生活や社会生活を営む際に起きる問題への相談や問題解決、助言といった必要な支援を行います。
対象者
・障害を抱えている方の中で、就労移行支援などを利用した後に、通常の事業所に雇用された方で、就労を継続している期間が6カ月を経過した方。
・障害を抱えており病気や障害により事業所を求職し、就労移行支援を利用した後に復職した方で、就労を継続している期間が6カ月を経過した方
⑧自立生活援助
障害者グループホームや障害者支援施設などを利用していた障害者の方が、地域で一人暮らしを行う、もしくは地域生活を行いたい方に援助を行います。
自立した社会生活や日常生活を営むだけでなく、地域社会から孤立しないように自宅へ一定期間に巡回訪問を行ったり、問題を把握し関連機関と連携を図るなど必要な支援を行っていきます。
対象者
・障害者支援施設やグループホームを以前に利用していた方で、現在は自宅で一人暮らしを行っているものの支援が必要な方。
具体的な対象者は以下になります。
①地域移行支援の対象に該当する施設に入所していた方や精神病院に入院していた方で、理解力や生活力を補うために支援が必要と認められた方。
②家族の死亡や、家族が入退院を繰り返しているなど、環境や人間関係の変化があり、地域生活を継続することが困難な方。
③市町村審査会で、個別審査を経て、自立生活援助のサービスが必要であり利用することが適当と認められた方。
・障害や疾病などの家族と同居しているために、家族からの支援が見込めないために自立生活援助からの支援が必要な方。
具体的な対象者は以下になります。
①同居しているか家族や共に暮らし世話を行ってくれていた方が、障害や介護のために移動支援が必要であったり、障害福祉サービスを利用して日常生活を送っている場合。
②同居している家族が病気などによって、入退院を繰り返していたり、自宅で療養が必要と判断された場合。
③同居している家族が高齢になったために、寝たきりの状態であったり、介護サービスを利用して生活を送っている場合。
④同居している家族や共に暮らし世話を行ってくれていた方の状況を総合的に踏まえ、利用者への支援を行うことが難しいと判断された場合。
⑨共同生活援助・グループホーム
障害がある方が必要な支援を受けて、自分らしい生活を送るための援助を行います。
基本は夜間において支援を行い、入浴や排泄といった生活上の援助から、生活上や将来についての相談、共同生活を送る上での悩みやコミュニケーションを図る等援助を行っていきます。
対象者
・知的障害、身体障害、精神障害などの障害がある方
・身体障害者は65歳未満、もしくは65歳になる日の前日までに障害福祉サービスの利用、もしくはそれに準ずるものを利用したことがある方に限る。
・多くの障害者グループホームは障害の程度が軽度から中程度になりますが、現在は重度障害者の方も利用出来るグループホームが増えつつあり、障害者グループホーム自体も多様化してきています。
まとめ
障害福祉サービスでの『訓練等給付』には、障害がある方が自分らしい自立した生活を営むために必要となる能力や知識を訓練したり、就職活動を行う中で不安な場面をサポートしていきます。
仕事や作業所などで日中活動を行うことは、どうしても社会から孤立しがちな障害者が地域社会へ参加することになります。
自分らしい生活や人生を歩むためにも、今持っているスキルを向上させたり、リハビリを行い自分の出来る範囲を増やしていくことは非常に重要になります。
そのために、『訓練等給付』を上手く活用していき、障害がある方も障害がない方にとっても自分の人生を創造していくことが大切です。