障害者グループホームと入居施設、どちらも障害のある方が親元を離れて生活をする場所になりますので、同じ場所であったり似たような場所だと思っていませんか?
実は障害者グループホームと入居施設は異なる施設になり、利用する方から内容に至るまで異なる点があります。
今回は、障害者グループホームと入居施設の違いについて紹介します。
障害者グループホームは入所施設ではない
近年、障害者グループホームが注目されています。
障害がある方の暮らしや想いを尊重されるようになり、障害がある方もない方も共に尊重し合い、地域社会で生活を送るためにも共同で自分たちの暮らしを営む障害者グループホームは新しい選択肢になってきました。
実は障害者グループホーム以外にも、障害がある方が親元を離れて生活を送ることが出来る場所には『入所施設』があります。
では、障害者グループホームと入居施設とは違うのでしょうか?
先程述べたように、障害者グループホームも親元を離れて他の利用者の方と共に生活を行いますので、大きくまとめると入居施設と言えるでしょう。
しかし、厳密にいうと障害者グループホームは『入居施設』ではなく、障害がある方の『暮らしの場』になります。
障害がある方が自分らしい生活や自立した生活を送りたい、親が高齢になった時のためにサポートが難しくなった時に、自分で生活を送るための暮らしの場になります。
ですので、日中は企業に勤めている方がいたり、作業を行ったりして自分の生活を送ったり、調理や掃除、洗濯といった身の回りの事を自分たちで行ったりと、支援を受けながらも自分たちのことは自分で行うことがベースになります。
ゆくゆくは一人暮らしを行うという目標を持って過ごしている方も多く、金銭管理や健康管理も支援を受けながら自分で行えるように専門知識や技術を有したスタッフがサポートを行っていきます。
主に夜間の入浴や食事、排泄といったサポートを行いますが、他にも社会から孤立しないように地域と交流を行えるように支援を行ったり、コミュニケーションを図れるように配慮していきます。
元々は軽度の障害を抱えている方や、自分である程度の生活を送れる方が対象になっていましたが、現在は障害者グループホームも多様化していますので、重度障害者の方が利用出来る障害者グループホームも増えつつあります。
障害者グループホームは、自立したいという気持ちを育みつつ自分のことを自分で行えるようにサポートを行っていく場として注目されています。
入所施設とは?
今回紹介する入居施設は知的障害にスポットライトをあてて解説を行いますが、実際には知的障害以外にも、身体障害や精神障害といったそれぞれの障害に対して入居施設があります。
障害がある方が入所することが出来る施設には3種類あります。
①知的障害者更生施設
知的障害者更生施設は知的障害者福祉法に規定されている満18歳以上の知的障害者が入所することが出来る施設です。
入所する方が多いですが、通所も可能になっており、地域社会との交流であったり、社会生活に適応や自立した生活を確立していくための支援やサポート、訓練を行っていきます。
知的障害があると認められており、療育手帳が交付されていると利用することが出来ます。
知的障害の程度は決められておらず、自分の思いを言葉に出来る人から、意思伝達が難しい方まで様々な方が利用しています。
また、施設によって特色があり、農業を一緒に行ったり、作業を行うなど日中は仕事を行っている施設もあります。
②知的障害者授産施設
障害がある方も社会生活を行うために知的障害者授産施設へ入所を行い、自分が生活を行う上で必要となる訓練や、就労を行う施設です。
以前は法廷授産施設と小規模授産施設に分かれていましたが、2006年の障害者自立支援法が施行されて以来は、障害福祉サービスの1つとして知的障害者授産施設が設立されました。
知的障害者授産施設以外にも、身体障害者や精神障害者の授産施設もあります。
③知的障害者通勤寮
知的障害がありながらも、仕事を行いながら自立生活を送ることを目的としている施設で、日常生活の支援から健康管理や金銭出納の管理、余暇活動のサポート等を行う入所施設です。
宿泊型自立訓練施設ともいわれますが、入居できる期間は原則として2年になっており、2年後は退所して一人暮らしを行ったり、グループホームなどを利用して地域社会での交流を行うことになります。
このように、知的障害者の方が入所できる施設3種類ありますが、障害には他にも種類がありますので、その障害に応じて施設が設置されています。
入所施設以外にも、障害者グループホームや知的障害者デイサービス等の施設があります。
【一覧表付】障害者グループホームと入所施設の違いとは?
障害者グループホームと入所施設はどちらも、自宅から通うのではなく、施設内に住むことになります。
一見同じように見えますが、実際にはいくつか異なる点があります。
では、障害者グループホームと入所施設の違いとは何があるのでしょうか?
◆代表的な障害者グループホームと入所施設の違い
障がい者グループホーム | 入所施設 | |
支援時間 | 基本は夜間 | 日中、夜間 |
定員 | 20名程度の少人数が多い | ・100人以上の施設が多い ・現在は少人数体制になりつつある |
立地環境 | 住宅地や市街地が多い | 住宅地からは離れていることもある |
障がいの程度 | 障害支援区分の条件はないが軽度から中程度が多い | ・障害者支援区分が区分4以上 ・50歳以上は区分3以上 ・中程度から重度の方が多い |
年齢 | 年齢の決まりはない | 年齢の決まりはないが、高齢化が進んでいる |
居室 | 個室とユニット | ・新しい施設は個室が多くなっている ・バリアフリー化やユニット化をしている施設が増えている |
費用 | グループホームによって値段が異なる | ・障害基礎年金内で収まることが多い ・足らずは生活保護でサポートする |
日中活動 | 敷地外の作業所や企業に勤める | 敷地内の作業所やデイサービスへ行く |
レクリエーション活動 | 夜間は自由時間が多くある | 夜間は自由時間が多くある |
外出の機会 | ・日中活動の内容による ・夜間の外出はスタッフが引率できる少人数であれば可能 |
・夜間の外出は難しい ・日中活動の内容による |
スタッフの職種など | ・世話人 ・生活支援員 ・サービス管理責任者など |
・生活支援員 ・看護師 ・サービス管理責任者など |
スタッフの数 | 少人数での暮らしになるのでスタッフの数も少ない | 大規模の施設ではスタッフの数も多くなる |
医療行為 | ・医療行為は出来ない ・服薬管理は可能 |
・医療行為は医療従事者が常駐している場合であれば可能 ・服薬管理は可能 |
利用期限 | 基本は無期限。 施設やグループホームによる |
基本は無制限。 施設やグループホームによる |
看取り | 出来ない | 事業所による |
このように、障害者グループホームと入所施設ではいくつか異なる点があります。
しかし、上記の異なる点については、あくまで一例になり実際にはこれらに当てはまらない場合もあるので注意が必要です。
では、異なる点について詳しく解説します。
①それぞれの施設の役割が異なる
【障害者グループホーム】
知的障害、精神障害、身体障害などの障害がある方が、自立した生活を営むために少人数で共同生活を営む場所です。
食事や入浴、排せつなどの支援を行う他にも、レクリエーション活動を行ったり、調理や掃除などの家事のサポートも行います。
障害者グループホームは、基本的に夜間の支援になりますが、日中であっても必要な場合は支援やサポートを行います。
少人数での共同生活になりますので、地域社会からの孤立を防ぐことが出来たり、お互いに刺激や協力し合うことが出来ると共に、自立を促しコミュニケーションをとることが出来ます。
(法律条文)
障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談、入浴、排せつまたは食事の介護その他の日常生活上の援助を行う
【入居施設】
入居施設は、障害がある方の施設入所支援を行う他にも、日中のサポートを全面的に行います。
障害がある方が、施設に入居し生活を行っていく中で、課外活動やレクリエーション活動などを通してコミュニケーションをとったり、生活上の動作を自分で行えるように支援を行っていきます。
(法律条文)
障害者につき、施設入居支援を行うとともに、施設入所支援以外の施設障害福祉サービスを行う施設をいう。
②主に運営を行う会社が異なる
【障害者グループホーム】
障害者グループホームは基本的に社会福祉法人やNPO団体が運営することが多いですが、中には企業や株式会社が運営している場合もあります。
【入所施設】
入所施設は障害者支援施設になりますので、国や地方公共団体、社会福祉法人に限られています。
③立地場所や定員の差がある
【障害者グループホーム】
障害者グループホームは一戸建てやアパートを利用することが多いので、住宅地にあることが多いです。
また、定員は4~7名と少人数で支援を行うことが基本になっています。
しかし、近年障害者グループホームも認知症の方は異なる障害がある方が一緒に生活する共生型グループホームであったり、より一人暮らしに近い形で生活をすることが出来るサテライト型グループホームなど多様化してきており、中には20名程度の中規模から大規模の障害者グループホームも増えてきました。
大規模の障害者グループホームであっても、基本の支援内容は同じで夜間の支援を中心に行いつつ、利用者にとって細かいニーズに応えられる体制を整えています。
【入所施設】
以前は住宅地から離れた場所に作られていることが多かったですが、現在は地域住民や社会との繋がりを持てるように、市街地に作られている所が増えてきました。
また、施設の大きさも小規模になってきており、50名以下の入所施設が多くなっています。
小規模にすることで、それぞれに必要な支援やきめ細かいニーズに応えることが出来るようになりました。
④障害の程度や年齢の違い
【障害者グループホーム】
障害者グループホームは、支援やサポートを行ったら自分で生活を送ることが出来る方が基本になりますので、障害の程度としては軽度から中程度の方になります。
中には仕事や作業を日中に行っている方も多くいます。
しかし、現在は障害者グループホームの多様化になり、重度障害者の方も利用出来るようになりました。
まだまだ重度障害者の方のグループホームは少数ですが、今後は増えていくことが考えられます。
障害者グループホームは年齢制限が定められていませんが、自分である程度のことが出来ることが基本になりますので成人以降の方が大多数になります。
障害者グループホームも近年の高齢化に伴い、共同で生活を行う方の高齢化が進んできています。
障害者グループホームと高齢化社会がどのように関わっていくかが今後の課題になります。
【入所施設】
入所施設の場合、障害者グループホームよりも重度化なのが特徴です。
障害の程度としては中程度から重度になっており、障害者支援区分としては4区分以上、50歳以上の場合は区分3以上になります。
障害者グループホームよりも、自分で生活をある程度送ることが難しかったり、意思伝達が難しい方が利用することが出来ます。
入所施設も年齢制限は決められていません。
しかし、障害者グループホームと同様に入所する方は高齢化が進んでおり、入所施設と高齢化社会の関わりが今後の課題になっています。
⑤活動内容
【障害者グループホーム】
障害者グループホームは、支援を受けながらも自分らしい暮らしを行うための場所になりますので、作業所や訓練所、デイサービスへ行く方や、一般企業に勤めている方もいます。
また、作業所などは障害者グループホームの敷地外にある所になります。
日中は仕事などの活動を行っていますが、休日などは外出を行うことが出来ます。
しかし、夜間の外出に関してはスタッフが全員を引率出来る少人数か、自立度が高い利用者に限られています。
また、レクリエーション活動や季節の行事なども行い、利用者同士の交流やコミュニケーションもはかれるように工夫されています。
【入所施設】
入所施設の場合には、同じ敷地内や入所施設内にある作業所で日中の作業を行うか、デイサービスへ行く方が多くなります。
また、外出に関しては休日や空いた時間にスタッフと一緒に出ることがありますが、夜間の外出は出来ないことが多いです。
⑥施設内の設備や部屋の違い
【障害者グループホーム】
障害者グループホームの部屋は個室になっており、他にユニットと言われる共同で利用する場所が設けられています。
寝室は自由時間を過ごすことが出来ますが、食事などは他の利用者と一緒にとりますのでコミュニケーションをとることが出来ます。
【入居施設】
以前は相部屋や大部屋が多くありましたが、新しい施設や改修を行った施設などは、個室が多くなっています。
入居施設も障害者グループホームと同様に、食事やレクリエーションは他の利用者と一緒に行いますので、ユニットでリビングなどがあります。
また、バリアフリーになっていたり障害に合わせた機能を充実化している施設が多くなっています。
⑦共に過ごすスタッフの数や資格・職種
【障害者グループホーム】
障害者グループホームで働く世話人は、以前は無資格で働くことが出来た世話人も、現在は介護福祉士などの資格を有している方が利用者の支援を行います。
他にも生活支援員やサービス管理責任者などが従事しています。
障害者グループホームは少人数で共同生活を行っている上に、障害の程度も軽度~中程度になりますので、スタッフの数は少人数の場所が多いです。
【入所施設】
入所施設も生活支援員やサービス管理責任者だけでなく、医療的なケアも行える必要がありますので、看護師や医師などとも連携を図れるようになっています。
入所施設は障害の程度が障害者グループホームよりも重い方が多くなりますので、利用者あたりのスタッフの数は多くなります。
また、夜間の対応が出来るスタッフも常駐しています。
このように、障害者グループホームと入所施設では様々な違いがあります。
現在は、障害者グループホームも入所施設も多様化しているために、施設によって特色があります。
障害者グループホームも入所施設などを利用したいと思った時には、家族の関わりがどの程度出来るのかや、通院や入院になった場合の対処方法、休日支援や金銭管理、利用する際の費用など細かい内容をしっかりと聞いておくことが大切です。
それぞれの利用開始までの流れ
障害者グループホームと入所施設を利用検討した際に、利用までの流れがどのようになっているかを確認しておきましょう。
【障害者グループホーム】
①まずは障害者支援区分認定を受けるために、自治体の障害福祉窓口へ相談へ行き申請を行います。
②認定を受けたら障害者グループホームを紹介してもらうか、自分で探し直接連絡を入れ申し込みましょう。
③障害者グループホームから受け入れられると連絡が来たら、障害福祉窓口で支給額を決定します。
④その後、障害者グループホームとの面談などを行い入居契約を行い利用をスタートします。
障害者グループホームの場合、必ず障害者の認定を受けていなければならないということはありませんので、利用するにあたって自治体へ申請を行う必要はりません。
自分で障害者グループホームを探し、直接利用を行いたい旨を伝え契約を行えば利用することが出来ます。
しかし、障害者認定区分を受けていないとグループホーム側が利用する必要性がないのではないか、という風にとられてしまい利用することが出来ない可能性があります。
そのため、まずは自治体の障害福祉窓口へ行き障害者認定区分の申請を行うことがおすすめです。
障害者認定区分の申請や障害者グループホームの障害などは、障害福祉窓口へ相談を行う以外にもケアマネジャーや相談支援事業者へ委託する方法もありますので、自分にとって最適な方法で行うようにしましょう。
【入居施設】
①まずは障害者支援区分認定を受けるために、自治体の障害福祉窓口へ相談へ行き申請を行います。
②障害支援区分が区分4以上であれば入居施設を利用することが出来ますので、認定を受けられたら障害福祉窓口や相談支援事業者から施設を紹介してもらいます。
③入居施設から受け入れられると連絡が来たら、障害福祉窓口で支給額を決定します。
④その後、入居施設との面談などを行い入居契約を行い利用をスタートします。
入居施設の場合、障害者グループホームと異なり、必ず障害支援区分の認定が50歳以上は区分3以上、その他の年齢は区分4以上が必要になります。
認定を受けるまでに1カ月以上の時間がかかる場合がありますので、時間に余裕を見て申請をしておくと安心です。
障害者グループホームも入居施設に関しても、利用したい施設が見つかったら必ず見学へ行き説明をしてもらいましょう。
実際に見学へ行くことで、他の利用者がどのように暮らしているのかや、どのようなスタッフがサポートしてくれるのか、生活環境がどのような雰囲気なのかを知ることが出来ます。
まとめ
障害者グループホームと入居施設は、一見同じような施設に見えますが実際には役割や目的が異なっていると共に、利用出来る対象の障害区分も異なってきます。
障害があるから、ではなく障害があっても自分らしい生活や想いを実現出来ることが重要になります。
どちらも親元を離れて生活を行いますので、事前にしっかりと見学や相談を行い利用者に寄り添い、楽しく暮らすことが出来る場所を選ぶことが大切です。