発達障害とペアになって耳にすることが多い『療育』。発達障害に疑いがあったり、発達障害と診断された時には療育を勧められます。
では、療育を始めるまでにはどのような流れや手順が必要なのでしょうか?また、療育の施設で働き指導員とはどのような人や視覚を有しているのでしょうか?
今回は療育を開始するまでの流れと気になる点を解説します。
1.発達障害では早期療育が勧められている
発達障害の子どもはその特性から、集団行動が苦手であったり、急な変化に対応できないなど様々な困難があります。その困難な部分は周囲の理解に加えて、本人がトレーニングをしていくことで緩和することが出来ます。また、自分の特性や苦手なことを理解することで、生活面で工夫したり仕事面でも時間配分を考えたり、相手に理解を求めることが出来るようになります。
このように、将来的に安定し自立した生活を送るために、サポートやトレーニングをしていくことが『療育』です。療育を行うことで、自分の特性と向き合い良い部分を伸ばしていったり、苦手な部分を補っていきます。その子が将来社会的に自立をし、困難と感じることを少しでも減らしていくことが療育の目的です。
療育は、小さい年齢(早期)にスタートすることで、適応しやすくなり効果が得られやすいと言われています。また、療育を通して親も子供の特性や関わり方を学ぶことが出来ますので、行動が理解出来ず怒ってしまったり、不安や行き場のないイライラをぶつけてしまうリスクも減らすことが出来ます。
発達障害の特性で普段から怒られることが多いために、『自分は出来ない子なんだ』『どうせ自分なんて』といった自己否定の感情が生まれやすくなることがありますが、療育を行うことで、親も行き場のないイライラをぶつけてしまったり、行動が理解出来ず怒ってしまうことが減少するため、自己肯定感を高めることに繋がっていきます。親と子、双方の心のゆとりがなによりも早期療育の大きなメリットになります。
2.療育をスタートする流れとは
発達障害は生まれた時にはわからず、成長していく過程で他の子と一緒に行動が出来なかったり、発達の凹凸が目立ってきたり、気持ちの切り替えが苦手というように、その特性が顕著に表れてきます。発達障害は個人差が大きいので、軽度であれば気が付かずに大人になる人もいますが、多くは乳幼児健診や幼稚園や保育園、小学校に進学するころには特性に気が付くようになります。
発達障害とわかると、療育を利用することを勧められますがどのような流れで利用申請をすれば良いのでしょうか?療育を受けるまでの流れをわかりやすく解説します。
発達障害かもしれないと相談を受ける(相談する)
乳幼児健診は1歳半や3歳で行われ発達がどの程度進んでいるかを調べますが、その際に気になる特性がある場合には発達障害かを見極めるために療育相談や時間を空けて再度健診を行います。そして、発達障害の可能性がある場合に専門の病院を受診した上で療育施設の利用へと進んでいきます。ですので、まずは乳幼児健診などをきちんと受けていくことが大切です。また、幼稚園や保育園に通園している場合であれば、気になる事があれば保育士から発達相談があり、その後保健センターや専門の病院を受診することになります。どちらの場合でも、子どもの成長や発達をきちんと見た上で療育施設や相談場所を教えてくれます。
幼稚園や保育園に通園しておらず、乳幼児健診よりも先に発達障害かもしれないと親が気が付く場合もあります。そういった時には、まずは自治体の保健センターに発達障害かもしれないと相談しましょう。保健センターには発達障害に関する相談窓口がありますので、まずは療育相談をして発達障害の可能性がある場合には専門の病院や施設を紹介してもらいましょう。
利用する施設を検討する
療育をスタートする前にどんな形態の療育施設を利用するかを検討します。療育センターには『障害児通所支援』と『障害児入所支援』がありますが、どちらの支援を受けるかで相談する窓口が異なります。
- 障害児通所支援…いわゆる自宅から療育施設に通いながら療育を行います。
相談するには市区町村の福祉相談窓口や障害児相談支援事業所に連絡しましょう。 - 障害児入所支援…自宅から通うのではなく、入所する形で療育を行う施設です。障害児入所施設の場合には、各児童相談所が相談窓口になります。入所が決定している場合には児童相談所に利用申請をしますが、また通所か入所か迷っている場合には、障害児通所支援と同様で福祉満天星窓口や障害児相談支援事業所に相談しましょう。
先ほど紹介したように、療育施設は通所型と入所型に分かれ、それぞれにメリットがあります。発達障害の場合は通所型が多くなりますが、入所型を検討している場合には話を聞いてみましょう。
また、それぞれの施設で特色が異なります。音楽療育に特化している施設、ソーシャルスキルを育むのが適している施設、学習面などのサポートが多い施設など様々な施設がありますので、自分の子どもの特性を考え、伸ばしたい部分とサポートやトレーニングをしていきたい部分の両面をしっかりと見つめて支援してくれる施設を選びましょう。
そのためには、それぞれの施設を一度は見学することが大切です。施設によっては、見学をしたときに障害児施設利用計画案を作成し、どのようなプログラムで療育を行うかを呈示してくれる施設もありますので、施設の利用を検討している場合には必ず施設内を一度見ておきましょう。
受給者証の利用申請を行う
療育施設を利用するためには『受給者証』が必要になります。『受給者証』は療育などの福祉サービを受けるにあたって、市区町村の自治体が交付する証明書の事で、児童の指名や住所、市給料などが記載されます。受給者証を取得することで療育の利用金額の支援をしてもらうことが出来ます。受給者証があれば所得によって異なりますが、基本的には自己負担額は1割で済みますので、申請するようにしましょう。受給者証は療育手帳がないと交付してもらえないのではないか、と思われるかもしれませんが、療育手帳がなくても受給者証は必要な書類や手続きを踏めば交付してもらうことが出来ます。また、発達障害と決定しなくても療育を受けるために受給者証を申請することも出来ます。
受給者証には『通所受給者証』と『入所受給者証』の2種類に分かれておりそれぞれの施設を利用するにあたって申請します。申請するためには医師の診断書や医療機関等の意見書、サービス等利用計画案などが必要になります。サービス等利用計画案は、療育施設の利用が必要であるという内容を記載している書類の事で、指定相談支援事業者に依頼して作成してもらったり、保護者が作成することも出来ます。しかし、申請方法や必要な書類は自治体によって異なりますので、事前に確認して用意しておきましょう。
調査員によるヒアリングを行う
必要な書類を提出し申請が出来たら、実際に書類に記載されている内容について確認し、療育を利用する必要があるのかというヒアリングを受けます。調査員と一緒に話をして、その子に必要である療育の内容や療育を行う量についてしっかりと検討され利用日数などが決定します。障害者通支援市区町村の支給担当窓口が、障害児入所支援は児童相談所の担当者が、書類とヒアリングを通して検討されます。
決定したら受給者証が交付される
療育が必要だと決定されたら、それぞれの受給者証が交付され療育施設の利用をスタートすることが出来ます。受給者証は『通所受給者証』と『入所受給者証』のどちらかが交付されます。
- 障害児通所支援…通所受給者証が交付されます。
- 障害児入所支援…福祉型では『入所受給者証』が交付され、医療型では『障害児施設医療受給者証』と『入所受給者証』が交付されます。
交付されるまでの時間は、自治体や時期によってばらつきがあります。検討に時間がかかったり、申請が多い時期だと交付までに1か月以上かかる場合もありますので注意が必要です。また、受給者証が交付されたら障害児支援利用計画を作成し、利用予定の施設と連絡を取ることになりますので、時間に余裕をもって行動していくようにしましょう。
療育施設の利用をスタートする
受給者証が交付されたら、利用予定の療育施設との契約を行います。それぞれの受給者証と障害児支援利用計画を提出し、療育をスタートします。障害児支援利用計画を元にソーシャルワーカーが面談を行い、日常生活での困りごとや保育園や幼稚園での様子などを具体的に話していき、特性にあったプログラムを作成し療育をスタートします。
このように、簡単に『療育をする』と言っても様々な施設に見学にいったり、必要な書類の提出、ソーシャルワーカーや自治体の福祉担当者との面談など療育を行うまでに、多くの段階を踏まなければなりません。ですので、療育を早くしたいと思っている場合には、自治体の保健センターや福祉相談窓口に連絡し相談しましょう。
今回紹介した療育を受けるまでの流れは、基本的な流れになりますので、順番が前後したり異なる手順が必要となる場合もあります。療育相談に行った時に、どのような手続きをとったらよいか、必要な書類や施設の種類などを確認しておくとスムーズに進めることが出来ます。
療育手帳と受給者証の違いは?
療育を行うために必要となる受給者証ですが、受給者証を取得することで療育施設の利用料の9割を自治体や国が負担してくれ、残りの1割だけが自己負担になります。ですので、それぞれの受給者証を持っていることで、安い値段で療育を受けることが出来ます。では、療育手帳とは何なのでしょうか?
療育手帳とは障害を持っている児童に対して、障害の名称や障害の程度を証明するために都道府県が発行しているものになります。療育手帳を取得するには基本的には知的な遅れがあると認められた場合になります。身体障害や精神障害の場合には、身体障害者手帳、精神障害者手帳が交付されます。療育手帳は知的な遅れがある児童に主に交付されますが、発達凸凹が激しい場合や療育が必要な場合には交付されることもあります。
障害があると認められた場合に交付されるのが療育手帳で、障害の特性により療育をすることが必要と認められた時に費用の負担を軽減するために交付されるのが受給者証です。
療育手帳があるとどのような障害があるのか等を知ることが出来ますし、療育の障害児指導計画の参考にすることが出来ますが、受給者証を取得することで国や自治体が療育費用を9割負担してくれますので、自己負担は1割程度になります。療育を行いたい場合には療育手帳はなくても大丈夫ですが、受給者証を交付してもらっておかないと利用料が高くなってしまいます。ですので、療育をしたいと考えている場合には、受給者証を取得しておくことを忘れないようにしましょう。
療育施設で働く指導員やスタッフとはどんな資格を持っているの?
療育施設では、その子の特性に沿ったプログラムが作成され、それに沿って療育が行われていきます。では、療育施設で働く指導員やスタッフはどのような人がいるのでしょうか?また、有資格者はいるのでしょうか?
療育施設では専門的な知識や視覚を持つスタッフに加えて、発達支援に関して専門的な研修や講座を受けたスタッフが主となりサポートやトレーニングしていきます。療育施設で働く指導員としては、以下のように専門的な知識を持っている人と一緒に行いますので、特性の中での苦手な分野の克服や、自己肯定感を高められるようになっています。
保育士
指導員としては保育士の資格を持っている人が、集団療育や個別療育を行っていきます。しかし、療育施設で働く保育士の方は、保育園で働く保育士よりも障害の支援や知識に対して理解が深く、関わり方や支援の工夫もしっかりと行うことが出来ます。
機能訓練員(機能訓練担当職員)
さらに専門性が高く訓練に関わってくれるのが機能訓練員(機能訓練担当職員)です。言葉の発達を促す言語聴覚士や、理学療法士、作業療法士といったサポートをしっかりと行ってくれる指導員になります。
児童発達支援管理責任者
療育施設を利用する子どもの特性や困難な箇所を見極め個別の支援計画の作成を担います。児童発達支援管理責任者がメインとなって、指導計画を作成していきますので、療育施設には必ず1人は在籍しています。日常生活で困難なことや、サポートして欲しいことなどがあれば、児童発達支援管理責任者と相談することになります。
このように、療育施設では専門的な知識や経験を持ち合わせた指導員やスタッフが常勤しています。気になる事や悩み、辛いことや関わり方の解決策なども相談に乗ってくれますので、保護者は安心して子どもを預けることが出来ます。
まとめ
療育は発達障害の子どもにとって、出来るという経験を積むことで自己肯定感を高めたり、苦手なことを克服するための大切な支援の場になります。しかし、療育を受けたいから今日申請しよう、ということは出来ず、きちんと必要な書類などを集め提出し、面談をクリアしなければ療育を受けることは出来ません。また、発達検査や診断書に関しても長く待たなければならない時期もありますので、療育を考えているのであればすぐに行動へ移したり情報収集を行っていくことが大切です。
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