人生100年時代と言われるように、日本も高齢化が進み高齢者の割合が増加しています。
そのために、様々な介護支援が制度化されたり、施設がもうけられています。
介護も多様化していく中で、『居宅介護』が注目されています。『居宅介護』とはどのような支援になるのでしょうか?今回は『居宅介護』について詳しく紹介します。
1.『居宅介護』とは?
居宅介護とは障害がある方を施設などに入所して支援していくのではなく、住み慣れた自宅で、一緒に生活を行うために必要となる支援をホームヘルパーなどが行うことを指します。
食事や入浴、排せつといった生活をしていくために必要な動作のサポートから、調理や洗濯、掃除といった家事の相談を聞いたり、利用者とコミュニケーションをとりながら心に寄り添いながら援助を行っていきます。
居宅介護を利用するには、条件がありますのでその対象とならなければ利用することが出来ません。
居宅介護は知的障害、精神障害、身体障害、難病患者等が該当し、年齢は関係なく利用することが出来ますが、以下の条件に当てはまる方になります。
・障害者支援区分が1以上(児童の場合にはこれに相当する心身の状態)である
・通院等介助が必要な場合には以下のいずれにも該当する必要がある
①障害者支援区分が区分2以上
②障害者支援区分が認定調査項目のうち、次に掲げる状態のいずれかに当てはまる
*歩行…全面的な支援が必要となる
*移乗…見守り等の支援が必要、部分的な支援が必要、または全面的な支援が必要となる
*移動…見守り等の支援が必要、部分的な支援が必要、または全面的な支援が必要となる
*排尿…部分的な支援が必要、または全面的な支援が必要
*排便…部分的な支援が必要、または全面的な支援が必要
このように、障害者支援区分が区分1以上であれば、基本的に居宅介護を利用することが出来ますが、通院等の介助を利用したいのであれば、障害者支援区分が区分2以上でかつ、認定調査項目の中で1つ以上の認定が必要となります。
利用希望者が該当しているかわからない場合には、ケアマネジャーや自治体へ問い合わせをして確認しましょう。
2.居宅介護で利用できるサービス内容とは?
では、実際に居宅介護で利用できるサービス内容とは何になるのでしょうか?
基本的には居宅介護はホームヘルパーが自宅へ向かい、身体介護や家事援助といった生活に関するサポートに加えて、必要な場合は通院等の介助なども利用することが出来ます。
サービス内容をまとめると以下になります
①身体介護…入浴は排泄、食事などを行う際の介助
②家事援助…調理や洗濯、掃除といった生活面だけでなく、必要な買い物の援助も可能
③通院等介助…病院などの通院の際に付き添い介助を行う
このように、利用者が生活を送る上で介助が必要となることや、健康維持のために必要となる病院への通院の際の車の乗降などのサポートを行うことが出来ます。
居宅介護では、利用者本人が生活上に困難に感じることがあった場合に、それらの支援や介助を行うとともに、利用者を支える家族の負担も軽減する役割りがあります。
3.『居宅介護』と『居宅介護支援』は全然違う!『居宅介護支援』とは?
居宅介護と似ている言葉で『居宅介護支援』があります。
同じような言葉になりますが、実は居宅介護と居宅介護支援は、全く異なる制度です。
先ほど述べたように、居宅介護は障害がある方が日常生活上で必要なサポートや支援を受けることが出来ますが、居宅介護支援とはケアマネジメントと言われている支援の1つで、介護が必要な人へ最適な支援を受けられるように手続きを代行する介護保険法保険給付対象サービスになります。
介護認定をされた方が、介護サービスを最適に受けるために、ケアマネージャーがケアプランを立てた上でそのサービスを行う事業所やサービス提供者と連絡や調整を図り、円滑に受けられるようにサポートを行います。
現在、高齢化により介護に関する問題は大きな課題として取り上げられています。
介護を行う方に負担が大きいことや、費用が膨らんでしまい経済的負担が大きいことなど、様々な課題がある中で、いかに多くの人が適切な介護サービスを受けることが出来るようになるために、居宅介護支援がスタートしました。
特別養護老人ホームなどの認知症の高齢者を受け入れてくれる施設は、都市部を中心に定員オーバーになっており、入居するまでに多くの順番を待たなければならない状況になっています。
介護を行う家族や本人が、介護施設を利用したいと感じて申し込みをしても、すぐに入居できる施設の数は少ないのが現状です。
しかし、介護を行う中で利用者自身が自宅での介護を望んでいたり、家族と一緒に過ごす時間を大切にしたいという想いを尊重し、その想いを支えるべく、訪問介護や短期入所といった介護サービスを受けることで負担を減らしていくことが出来る「居宅介護」が奨められています。
4.『訪問介護』と『居宅介護』はどう違うの?
自宅で生活上自分1人で行うことが難しい場合に利用する訪問介護ですが、いったい居宅介護とは何が異なるのでしょうか?
実は居宅介護と訪問介護では、それぞれの制度内容や対象になる利用者が異なります。
①:訪問介護と居宅介護の制度の違い
どちらもサービス内容が似ていますが、訪問介護は介護保険制度による介護サービスになり、居宅介護の場合には障害者総合支援法にもとづいて行われる障害福祉サービスになります。
訪問介護は介護保険法により行われる介護サービスになりますので、高齢や病気によって生じる日常生活での困難な場面であったり、生活上の機能低下が見られる場合に、自立した生活を送れるように自宅へ行き生活動作等のサポートを行います。
訪問介護は介護保険における指定居宅サービスの1つに指定されています。
介護保険制度の居宅サービスが訪問介護に該当するのに対して、居宅介護は障害者総合支援法による障害福祉サービスになり、障害がある方もない方も基本的人権を享有する個人として、それぞれ生活を営むことが出来るように、障がい者にとって生活を送る上で困難な場面や出来事に対してサポートを行っていく介護サービスになります。
つまり、訪問介護も居宅介護もそれぞれ利用者の自宅へ訪問し生活のサポートや支援を行うことに変わりはありませんが、訪問介護は高齢者を対象にした介護サービスで、居宅介護は障がい者を対象にした障害福祉サービスになります。
訪問介護も居宅介護もどちらもサービス内容としては、ほぼ同じ内容になりますが、制度としてははっきりと分けられています。
それは、算定項目や合成単位といった給付体系に違いがありますので、支援内容にも少し違いがあります。
中でも居宅介護の場合、身体介護においての通所支援や外出の介助といったサポートは認められず、同行援護や移動支援、行動援護のどれかからの支援になります。
*同行援護…外出をしたり移動際に、著しい困難がある視覚障害者の方に対して一緒に外出を行い介助や支援を行っていくこと。
*移動支援…移動が困難な方に対してガイドヘルパーが同行し外出のサポートを行います。
*行動援護…外出や行動を行う際に支援やサポートを行います。知的障害と精神障害の方が対象となる支援で、危険を回避するためや移動に対する援護を行います。
②:対象になる利用者の違い
介護保険法と障害者総合支援法というように、制度が異なる訪問介護と居宅介護ですが、制度が異なりますので当然、対象になる利用者も異なります。
訪問介護では、介護保険が適用されますので、利用対象者は原則65歳以上になります。
利用対象者は65歳以上の第一号被保険者か、特定疾病により認定を受けている40歳から64歳以下の第二号被保険者で、要介護認定を受けていることが前提になります。
それに対して、居宅介護の利用対象者は18歳以上の知的障害、身体障害、精神障害で障害支援区分1以上に認定されている方と、18歳未満の知的障害、身体障害、精神障害に当てはまる児童になります。
居宅介護の場合、他にも指定難病や特殊な疾病があったり、事故や病気によって生じた肢体障害や視覚障害も当てはまり、居宅介護を利用することが出来ます。
利用者の年齢が65歳以上の場合であれば、基本的に介護保険による訪問介護を利用することになります。
また、40歳から64歳未満で障害支援区分が認定されている方でも、介護保険が適用されることが多くなりますが、事故により障害を抱えてしまった場合にはこの介護保険は適用されません。
どちらの保険が適用されサービスを受けられるかは、一度自治体へ行き自分がどの区分に当てはまるかを確認しておくスムーズに手続きをすることが出来ます。
このように、居宅介護と訪問介護ではそれぞれ制度の違いや対象になる利用者の条件が異なります。
制度や対象は異なるものの、サポートや支援の内容は基本的には変わりません。
しかし、現在は障がい者と高齢者が一緒にグループホームで生活を行っていくなど共生型のサービスも多くなりました。
共生型サービスの場合には、居宅介護ではなく訪問介護として利用することになります。
5.まとめ
障害がある方が自宅で精神的にも、安心しながら生活を送るために必要な支援を行うための居宅介護。訪問介護と同じような支援やサポートを行いますが、介護保険制度を利用して行う訪問介護とは異なり、居宅支援の場合には障害者総合支援法を利用して支援を受けることになります。
居宅介護は障がいをかかえている方の生活を支える大切な障害福祉サービスです。今後も居宅介護のサービスの充実を行い、障がい者が自分らしい生活を送りつつも充実した社会生活を行えるような地域を築いていくことが大切になります。
参考:【公表されている介護サービスについて|厚生労働省】https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/