神奈川県や埼玉県と並び、東京のベッドタウンを多数抱える千葉県。
人口の多い千葉市をはじめ、船橋市や松戸市、東京ディズニーリゾートのある浦安市など、都会のイメージを持っている方も少なくないかもしれません。
そんな千葉県にも実は数々の方言があり、千葉県民であれば知らず知らずのうちに使っている可能も。
本記事では千葉県の方言の特徴や代表的な方言を例文とともに紹介します。
千葉弁とは
千葉県で話されている方言は千葉弁(ちばべん)または房総弁(ぼうそうべん)と呼ばれています。
千葉県は西関東と東関東の移行地域であり、江戸の影響もあるため、千葉弁には目立った特徴はないといわれています。
特に千葉県北西部(*)は東京通勤圏でもあるため千葉弁が使われることは少なくなりましたが、地域によっては特徴的な言葉や言い回しを聞くことができるでしょう。
*) 松戸市・野田市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市と船橋市・市川市・浦安市・習志野市・八千代市
千葉の歴史
千葉県は関東地方南東、東京都の東に位置する地域で、以下の房総三国から成り立っています。
- 上総国(南総)
- 安房国(房州)
- 下総国(北総)
上総国(かずさのくに)は現在の千葉県中央部。千葉市や君津市、東金市、いすみ市、勝浦市などがある地域に相当します。
安房国(あわのくに)は現在の千葉県南部。館山市や南房総市、安房郡鋸南町などがある地域に相当します。
下総国(しもうさのくに)は現在の千葉県北部と茨城県南西部、東京都東部。千葉市や市川市、習志野市、流山市、野田市、柏市、我孫子市、鎌ヶ谷市、船橋市、八千代市、松戸市、成田市、四街道市、旭市、佐倉市、佐原市、銚子市などがある地域に相当します。
千葉県の方言(千葉弁)の種類と特徴
千葉弁(房総弁)は次の3種類に分類するのが一般的です。
- 房州弁(ぼうしゅうべん)
- 東総弁(とうそうべん)
- 野田弁(のだべん)
以下ではそれぞれの方言と特徴、主な語彙を紹介します。
房州弁
房州弁は主に房総半島南部(千葉県南部)で話される方言で、西関東方言に属します。
安房地域(房州)を中心に、隣接する上総南部と、袖ケ浦市や市原市の一部で話されています。
房州弁の特徴は、語尾に「〜べ」や「〜ぺ」と付くこと。千葉県館山市のマスコットキャラクター「ダッペエ」は方言の「だっぺ」が名前の由来です。
房州弁には以下のようなものがあります。
- おいねえ:よくない
- おっぺす:押す
- くわっせえ:食べなさい
- てっぱる:大きい
- やんでく:歩いて行く
- 〜やんべえ:〜しよう
東総弁
東総弁は千葉県東部(銚子市・旭市・匝瑳市を含む地域)で話される方言です。
房州弁と茨城弁の中間的な方言だとされていますが、東北弁に似ているといわれることもあります。
東総弁には以下のようなものがあります。
- あじょーだぁ:どうですか
- おっち:味噌汁
- けえ:食え
- ぬっけぇ:あたたかい
- やあっこい:柔らかい
- わんらーらー:あなたたち
野田弁
野田弁は千葉県野田市周辺で話される方言です。
東総弁と同じく、茨城弁にも近いといわれることがあるようです。
野田弁には以下のようなものがあります。
- かんまーす:かき回す
- こわい:固い
- 〜ちって:〜しちゃって
- はらくち:おなかいっぱい
- やっこら:やっとこ
- やったんべ?:やったでしょ?
千葉弁の主な語彙と例文
千葉弁の主な語彙と例文を紹介します。
あ行
- あおなじみ:青あざ。
例:ぶっつえたそばが、あおなじみんなっちったーおー(ぶつけたところが、青あざになってしまったよ) - あて:私・俺などの自称。
- あかんぺろん:すりむいて皮が剥がれた様子。
- あに:何。何ですか。
例:やろーは、あに言ったってしたがわねえお(あいつは何を言ってもきかないよ) - あじした?:どうした?
例: そん腕あじした?(その腕どうした?) - あじする?:どうする?
例:にしゃ、あじする?(あなたは、どうする?) - あじょうだ?:どう?
例:こん飯、あじょうだ?(このご飯、どう?) - あてこともねー:どうしようもない。とんでもない。
例:こらぁ、あてこともねーのー(これは、とんでもないことですね) - あんが:いいえ。
例:あんが、そうでねっぺおー(いいえ、そうではありませんよ) - あんご:カエル。
例:あんごがうちんなかへーっちゃっておー(カエルが家の中に入っちゃってね) - あんでんねー(あんとんねー):何でもない。なんてことない。
例:あんでんねぇおー(何でもないよ) - いいあんばい:いい天気。
- いそっぴ:精進ガニ。
- いっぺえ:たくさん。いっぱい。一杯。
例:昔はおかいこいっぺぇ飼ってたけんな(昔は蚕をたくさん飼ってましたけどねぇ) - うっちゃる(またはふっちゃる):捨てる。(人間を)放っておく。
例:そおいらまへうっちゃんでねえ(その辺に捨てるんじゃない) - うならかす:相手を圧倒させる。急いでやる。
例:うならかして行かないと(急いで行かないと) - うなう:耕す。
例:はたえうなう(畑を耕す) - うら:後ろ。
- うんてえ・おんて:重い。
例:こん鍋はうんてえなあ(この鍋は重いですね) - おいさ・おっさ:そうだよ。
例:おっさ、めー(そうだよ、君) - おいねぇ・おんね:ダメ。無理。
例:そらおいねぇよ(それはダメだね) - おぅよ:いいよ。
例:おぅよ、明日いくべよ。(いいよ、明日行こうよ) - おごいぼぅ:おこりん坊。
- おっぺす(またはおっぴす):押す。
例:そー、おっぺしてくらっしぇー(そこを押してください) - おみおつけ(おつけ):味噌汁。
例:今日のおつけはあんだかい(今日の味噌汁の具はなんですか) - おめぇらが:お宅。あなたらが。
例:おめえらがじゃ、はあ田植え終わったんか? - おんだら:私たち。
例:おんだらん番(私たちの番) - おっける:ころぶ。
- おんごしょる:折れる。
か行
- かぁねぇ:食べない。
- かっくらす:殴る。
例:かっくらわすど(殴るよ) - ~がん~:~の~。
- ~かし:~かしら。
- かせる:かぶれる、食べさせる
- かたす:片付ける。
例:それ、かたしといて(それ、片付けといて) - かます:はさむ。動かないように言葉や動作・くさびをたてること。
- かわばち:川魚 ナマズ目ギギ科、標準和名ギバチ
- かんます:かき回す。
- きばる:痛くなる。
例:頭がきばっちってどうしようもねぇ(頭が痛くなってどうしようもない) - きもいる:むかつく。腹がたつ
- きもん:着物
例:そおの、きもんとってくらっせえ(そこの、着物を取ってください) - くっかぐ(またはふっかぐ):噛む。
- 〜くったい:〜ください。
例:乗せてってくったいよ(乗せてってくださいよ) - くむ:崩れる。壊れる。
例:あっちのびゃくがくんだぁ(あっちの土手が崩れました) - ~け:~か。
例:そうけ(そうか) - けぇ:食え。
例:まっとけぇよ(もっと食えよ) - けえる:帰る。
例:おせぇかいけえんべよ(遅いから帰ろう) - こええ:硬い。疲れる(一部地域)。
例:あんだ、今日のメシはずいぶんこえんね。(なんだか、今日のご飯はずいぶん硬いなあ) - こちょぐってぇ:くすぐったい。
- こっぺ:屁理屈。
例:こっぺ、きゅうな!(屁理屈を言うな) - こばっこ:端・隅っこ。
さ行
- さーしぶり:久しぶり。
例:さーしぶりだのー(お久しぶりですね) - ~じっか:~じゃないか(君津・木更津周辺のみ)。
- じょうぼ:門前・家の前の通路。
- じょんごろ:おたまじゃくし。
- すてれっぱつ(またははれっぱつ):「てっぱつ」の最上級。
すてれっぱつな、魚だのー(とても大きな魚ですね) - ずんねぇ:大きい。
- せど:裏。
例:せどから取ってくらっしぇえ(後ろから取ってください) - そうだいねぇ:そうだよね。
- そば:近く。近所。周辺。
た行
- ~だで:~じゃないか。
- だけんが(またはだっけんが、けんが、でんが):だけれども。
例:だけんがよう(そうだけどさぁ) - たんご:牛糞、肥やし。一部地域では「ふませ」とも。
- だんみゃく:散らかっている様をいう。
例:部屋ん中がだんみゃくだんねか(部屋の中が散らかっているじゃないか」 - ちいちゃっけぇ・ちっけぇ:小さい。
例:おらがは、ちいちゃっけえうちだーお(私の家は、小さな家ですよ) - ちょんぴこ:アゴハゼ属に属する魚の総称。
- ~っしょ:~でしょ。
例:おめぇ昨日駅にいたっしょ(君、昨日駅にいたでしょ) - てっぱつ(またはでっぱつ):「大きい」の比較級的な意味。結構大きい。
- ~でん:~じゃん。~でしょ。
例:ひでーでん(ひどいでしょ) - ~でんいぇー:~じゃんかよー。※「~でん」より荒っぽい。
例:こらぁ、ひでーでんいぇー(これはひどいじゃないか)
な行
- ないびーびー:泣き虫。意気地なし。
- にぎぃめし:おにぎり。
- にし:二人称を意味する。あなた。君。
- にしら(またはにっしゃら):にしの複数形。あなたたち。
例:にしら、どおんもんだ(あなたたちは、どちらの方ですか)
は行
- はー:もう。
例:はーいいけ?(もういいのか?) - はがち:ムカデ。
例:はがちに噛まれたそばがいたーっておんね(ムカデに噛まれたところが痛くていけない) - はしけえ:チクチクすること、かゆい。
例:はしけえでおいねえや(かゆくていけないよ) - はなっと:岬の先端部。かど。
- びたびた、びたんびたん:びしょびしょ(雨などにぬれた様子)。
例:シャツがびたびたになっちたーおー(シャツがびしょびしょになってしまったよ) - ひとみず:人見知り。
例:あの子はひとみずだのー(あの子は人見知りだなぁ) - ひして:一日。
- ひゃっけぇ、ひゃっこい:冷たい。
例:ひゃっけえ酒(冷酒をください) - ぷっくす、ぼっこす:壊す。破壊する。
例:バイクぼっこしちゃったーおー(バイクを壊してしまったよ) - ぷっくらす:かっくらす(殴る)よりも強い意味
- ほいで:それで。
- ほてる:熱くなる。顔などが熱くなる。怒る。
- ぼら:穴、トンネル。
- ほんこん:本気で。マジで。
例:ほんこんやれよ!(本気でやれよ!)
ま行
- まっこ:かやの葉、真菰(まこも)の葉 盆供に用いる。
- まっと:もっと。
例:まっと、のまっしぇー(もっと飲みなさいよ) - もぢける:壊れて外れる。
や行
- やあべ:一緒に歩こう。
- やんでく:歩いていく。
例:今日はいいあんばいだからよぉ、君津駅までやんでくべや(今日はいい天気なので、君津駅まで歩いて行きましょう) - やあしんぼぅ:食いしん坊。
- やってらぁ:始まっている。
例:大会ははぁやってらぁ(大会はもう始まってるよ) - やまべ:川魚、コイ科オイカワのこと。
- やんべぇ:~をやろう。~をしよう。
例:はや、釣りやんべぇおー(はやく釣りをしましょう) - よいなもんじゃねぇ(またはよいじゃねぇ):容易なものではない。
- やぶ:歩いてゆく。行く。
- やべさ:行こうよ。
ら行
なし
わ行
- わら:お前たち。あなた方。「わんら」ともいう。
- わん:お前。あなた。「われ」は「わん」の丁寧語。
- わんだら:おまえたち。あなたたち。
例:わんだら、どぉーんやんどもだ(おまえたち、どこの者だ)。
千葉県の方言 まとめ
本記事では千葉県の方言(千葉弁・房総弁)の特徴や主な語彙を紹介しました。
住んでいる地域によっては「千葉県民だけど、ほとんど聞いたことがないものだった」と感じた方もいるかもしれません。
方言は生き物。ここに掲載した以外にもまだまだ地域で使われる言葉はあります。
方言を知ることが、千葉への郷土愛を深めるきっかけになれば幸いです。