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【対応例付】ADHDの子供と楽しく学校生活を送るための工夫とは

ADHDはその特徴から、周りから距離を置かれてしまったり『わがままな子』や『乱暴な子』という認識を持たれることが多くあります。

しかし、ADHDという障害は自分で行動を抑えることが難しくなるので、学校生活をしていくには周りの理解を得た上で適切なサポートをしていくことが大切です。

では、私たちはどのようにADHDの人と接していくのが良いのでしょうか?実際の対応例も紹介してわかりやすく解説します。

 

ADHDの人達との接し方は?

『注意欠陥多動性障害』と言われるADHD。幼少期には気が付くことが出来なかったものの、年齢が上がっていくにつれて周囲と同じようにじっとしていることが出来なかったり、自分の感情のまま行動してしまうという面が表立ってきてしまいます。7歳を目安に『注意欠陥』『多動性』『衝動性』の3つの特徴が1つ以上顕著に現れてくるとADHDと診断される可能性があります。

ADHDの人はその特徴を周りの人が知り、行動について理解することが大切です。ADHDは治療薬があるわけでもなく、手術をすれば治るという障害でもありません。また、ADHDの人はLD(学習障害)を併せて持っていることもありますが、全体的な知的な遅れは目立たないので、自分の障害について悩み苦しんでいる人が多くいます。

友達関係や学校生活の行動面で周りから注意されることがあり、学習意欲等が少なくなってしまっている人もいるので、まずは周りの人が障害について理解することが大切です。ADHDの人と楽しく暮らしていくためには、みんなで協力し苦手な面を理解した上でその部分を補っていく必要があります。

 

ADHDの人との接し方のポイントは


・ADHDの人は行動に悪気はないということを理解する・してはいけない行動をした時には、穏やかな口調で簡潔にいけないことを伝える・行動に関してからかったり笑ったりしない・内容について理解しにくい場合には紙に書いたり、ゆっくりと理解しているかを確認しながら進めていく

・グループ活動などは事前に確認したり、内容を伝えていくようにする

・ADHDの人もクラスの仲間という認識を忘れないようにする

 

ということが挙げられます。

ADHDという障害は、周りの理解が必要不可欠です。みんなで協力して行動を理解し出来ない部分は補っていくことで、私たちもADHDの人も楽しく仲間として暮らしていき有意義な学生生活を送ることが出来ます。

 

【対応例】授業に必要な物も良く忘れてしまう場合の工夫とは?

ADHDの人の中でも『注意欠陥』が強く表れている人は、どうしても気を付けなければならないことや覚えておくべきことや、持っていかなければならない物などを覚えておく事が難しくなります。ですので、その場では必ず覚えていたことであっても、他のことに気が向いてしまうと最初に覚えていた重要なことは忘れてしまいます。この忘れてしまうということは、私たちがたまに忘れ物をするという頻度とは異なり、1日に何回もあることもあります。この対応としては、授業に必要な物の場合だと忘れてしまうと授業に参加出来なくなりますので、忘れても授業に参加出来ないことがないように予備を1セット用意しておきましょう。『注意欠陥』が強いADHDの人は忘れものを全てなくすことが難しいので、学校に予め忘れた時用にもう用意されていると授業に遅れずに済みます。

また、ADHDの人は片付けが苦手の人も多くいます。注意力や集中力を持続させることが難しいので、片付けたり、物を出し入れしたりして整頓することが苦手になってしまうのです。ですので、小学校低学年からADHDの子供には片付け方を丁寧に繰り返し説明するようにしましょう。空いた時間を見つけて、ロッカーや机の中を教師と一緒に片付けていき、どのように片付ければよいかを伝えていくと理解しやすくなります。また、片付け方や図を紙に書いて用意しておくと、次にどのように片付けたらよいかを忘れないで実行することが出来ます。

このように少しの工夫をしていくだけで、忘れ物や注意しなければならないことに関して、しっかりと本人が意識することが出来忘れ物も減らすことが出来ます。しかし、どうしても忘れてしまうこともありますので、予備を用意しておき忘れてもきつく叱らないようにしましょう。

 

【対応例】授業中に歩いたり周りの子にちょっかいを出して迷惑になっている時は?

授業中に歩いてしまうこともADHDの子供に多い行動の1つです。『注意欠陥多動性障害』とあるように『多動性』が強い子供だと、じっとしていることが苦手で、気持ちが向いた方へ自然と体が動いてしまいます。しかし、授業中などに歩いていけないことは理解出来ており、してはいけないけれど周りにある物が気になってしまい、そちらへ動かずにはいられないという心が働き行動へ表れてしまうのです。また、歩き回らなくても、周りの子の様子が気になりちょっかいを出してしまったりと、退屈になっていくとこのような行動も目立ってきます。

この行動の場合には、まずは授業中は歩かずに静かに話しを聞くことを伝えていきましょう。そうした上で、授業中に歩いても良い役割を与えるようにし、気分を切り替えられるように工夫していきます。プリントの配布や、必要な本を取ってくる、プリントや宿題を集める係など、歩いても大丈夫な役割を与えることで授業中の座っていなければならない時間に歩いてしまいたくなる衝動を抑えることが出来ます。

また、座る位置も重要で、一番前の席や後ろの席は、水槽や他の道具が気になってしまい集中しにくくなりますし、窓際の席だと外で活動している生徒を見つけて注意がそちらへ向いてしまう可能性があります。ですので、座る席はあまり他の環境が影響してこない真ん中の席がベストです。そして、周りの子供達にも不要な物やふでばこなどは机の中にしまうようにして、鉛筆と消しゴム程度しか机の上に出さないように伝えていきましょう。クラスみんなが協力してADHDの人を支えていくことが大切です。

 

【対応例】受けたくない授業の時に保健室に行ったりしてサボっている事がある?

ADHDの人は見た目では障害があるとは気が付いてもらえない上に、言葉の発達も同じ年齢の子と遜色がないので、どうしても障害について理解されにくくなってしまいます。しかし、じっとしていられなかったり、衝動的に手が出てしまうことは中々抑制することが出来ず、周りからは『わがままな子』として見られてしまうことが多くあります。また、小さい時から怒られて育つことが多いので、自分に自信がなくなっていて勉強だけでなく、多くのことに意欲がなくなってしまっている子がいます。特にLD(学習障害)とADHDを併せ持っている場合などは、授業に出たがらない事が顕著に表れていきます。

中でもいつもの授業ではなく、子供同士がチームになって調べて発表する授業等になると、周りに責められたり誤解されることが多いために苦手意識が出来てしまっていることが多く、授業に出ることが嫌になってしまう事があります。字が綺麗にかけなかったり、しなければならないことが遅かったりすると、周りの子から『遅いね』『まだ?』と怒られることが以前からあったり、何かきつく批判されたり、障害を理解してもらうことが出来なかったために、自信をなくしてしまっているので授業に出たくないと感じてしまいます。では、このように学習意欲や自信をなくしてしまっている時にはどうすれば良いのでしょうか?

まず、自信をしっかりと持てるようにサポートすることが大切です。ADHDやLD(学習障害)の子供は、丁寧に学習内容等を伝えていくことで出来ることもかなり多くなりますので、出来ることを褒めていき自信をつけてもらうようにしましょう。教師やサポート出来る人が側につき、やり方や書き方を伝えていき少しでも出来た事はしっかりと褒め自信へ繋げていきます。また、目に見える成果も効果的です。出来たところまでシールを張ったり色を塗ったりすると、意欲的に取り組むことが出来ます。

また集中力が持続しにくいので、課題についても少し量を減らし、まずは全てきちんと出来ることを目標にしましょう。苦手な事に取り組めるように、字が苦手な場合にはマスを大きくして書きやすくしたり、計算が苦手であれば簡単な問題を何度も復習するなどして取り組めるように工夫しましょう。わからない問題を教師に聞くことが恥ずかしい人もいるので、サポート出来る人がいる場合には側で見守り進捗を確認していきます。教師も同様に出来ているかを確認し、その都度励ましたり出来ているところを褒めていくことが大切です。

しかし、やはりどうしても一回知ってしまった恐怖心や心配な気持ちをぬぐうことは出来ません。どうしても授業に出たくない場合には、保健室や自分が落ち着く場所に行っても良いことを伝えましょう。安心していられる場所へいつでも行っても良いということを知ることで、心の拠り所にすることが出来ます。無理をして授業を受けるのではなく、自ら進んで参加出来るように工夫していくことがポイントになります。

また、周りの子供へもADHDの特徴を伝えていき理解してもらうことも大切です。苦手な授業に出ていないと責められることがないように、障害ついての理解を深めていくようにしましょう。

 

【対応例】けんかが多く叩いてきたり、ひどい言葉を使っている!

ADHDの『衝動性』が強いと、自分の感情が上手くコントロールすることが出来ず衝動的に手が出てしまうことがあり、それがきっかけで喧嘩へ発展してしまうことがあります。ADHDの行動がわかる小学生くらいになってくると、けんかはあるものの手がすぐに出ることは徐々に減っていっていきますが、『衝動性』が強いとすぐに手が出てしまいます。また、欲しいと思ったものや貸りたいと感じたものを、相手に『貸して』と言わないままに勝手にとっていってしまうこともありトラブルに発展してしまうケースもあります。

このことに対しては、まず相手に物を借りる時にはどうすれば良いかを、クラスみんなで確認しましょう。貸して欲しい時には『貸して』、返す時には『ありがとう』と基本的なことを確認しルールを守るように伝えていきます。

また、けんかになってカッとなってしまうとつい手が出てしまいますので、お互いカッとならないように『〇〇しないでね』と穏やかな口調で伝えることも大切です。

クラスのみんなにADHDの特徴について理解してもらうように説明し、みんなの協力が必要になります。子供同士ではつい口調がきつくなってしまいますので、教師や大人がフォローに入ってヒートアップした空気を落ち着かせてから話し合うなど臨機応変に対応していきましょう。

口調がきつく、『バカ』『ちび』『デブ』といった言葉を衝動的に言ってしまうこともあります。人を傷つける言葉や体に関する言葉、苦手な事や不得意な事に関する言葉などは使ってはいけないということを伝えていき、もしも言ってしまった時には『ごめんなさい』と謝るように本人へ伝えましょう。

ADHDの人は自分では使ってはいけない言葉や、手が出ることはいけないことだという認識は必ず頭の中にあります。小学生くらいになれば、手が出てしまったり、汚い言葉を使ってしまい喧嘩になることはADHDの子供以外でもありますので、クラス全体で言葉使いや苛立った時にも手を出さないで相手に自分の気持ちを伝えるようにするというルールを確認していきましょう。

衝動的な面が強いADHDの場合、自分の気持ちを抑えることが難しく『叩くことはいけないことだ』と頭で理解していても、体は動いてしまいます。後ほど後悔したり自分でいけなかったと反省するものの、周りからは理解されにくいことも事実です。

人との関わり方や付き合い方を学ぶには学校生活が適していますので、小学校低学年から何度も繰り返しルールや相手が傷つく言葉などをしっかりと伝えていくことが大切です。

 

まとめ

ADHDの子供達は決して珍しくはなく、1クラスに1人程度はいる割合になります。ADHDの症状としても、衝動的な行動が目立ったり、じっとしていられなかったりと周りからは誤解されやすいので、まずはADHDの特徴をみんなで共有することが大切です。周りが障害について理解することで、授業や関わり方も工夫することが出来ます。

今回紹介した対応例はほんの一例です。ADHDはそれぞれの子供によって症状の強さも異なるので、その子に適切な対応をしていくことが、私たちとADHDの子どもが楽しく暮らす鍵になります。

今回の対応例をもとに、子供が楽しく快適に学校生活が過ごせるように周りの協力に加えて、教師が主体となって授業や活動を行っていきましょう。また、どのようにADHDの人と接していけば良いかと考えるのではなく、いずれはADHDが個性で魅力なのだと感じ、自然に仲間として接することが出来るようになることが大切です。周りの大人や教師がそのサポートに周り、クラスみんなで障害について理解しその子にあった対応を行っていくことが求められています。

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