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わがまま?乱暴?その行動はADHD(注意欠陥多動性障がい)が理由かも

学校の授業中に部屋から抜け出してしまったり、ついつい手がでてしまう、忘れ物が多い…以前はこのような子供は『わがまま』や『乱暴』な子として見られていました。しかし、わがままな性格でも乱暴でもなく、実はADHDという障がいが原因でこのような特徴が表れていることがあります。では、ADHDという障がいはどのような障がいなのでしょうか?ADHDについて理解しサポートしていくためにも、まずはどのような障がいなのかを知りましょう。

ADHDってどんな障がい?

ADHDという障がいは広く知られていますが、実際にはどのような障がいなのでしょうか?ADHDは日本語で『注意欠陥多動性障がい』といいますが、ADHDの子供は年齢に比べると、じっとしていることが苦手であったり、衝動的に行動してしまったりと年齢に不釣り合いな行動が多くあります。

ADHDは自分の気持ちをコントロールする力が弱く苦手であるために、様々な行動を引き起こしてしまう障がいです。集団で行動する学校生活では、ADHDの子供は障がいについて理解されにくく、乱暴者や親が甘やかしてきた子供というレッテルを張られることが多く批判を受けがちです。ですので、しっかりと障がいであることを子供達にも伝えていくと共に、障がいがあっても同じ仲間であるためにサポートをしていくことが大切ということを伝える必要があります。

また、『注意欠陥』というように集中力が持続しないことからもわかるように、学習面でも遅れてしまうことが多く、ADHDの特徴について理解した上で授業も工夫していく必要があります。

ADHDの原因は未だに明確にはわかっていません。しかし、ADHDの名前からもわかる様に、自分の感情や行動、注意をコントロールすることが難しいので、脳の働きや神経伝達物質が関係しているのではないかと言われています。行動を指示する前頭前野の働きが偏っていたり、脳の神経伝達物質のドーパミンやノルアドレナリンなどの働きが不足しているなどADHDの人に特定の症状がありますが現代の医療では明確にはなっていません。

ADHDの子供達はその症状が原因で、特に親のしつけが悪いからだとか、能力が劣っているから、両親が共働きしているために家で寂しい思いをしているからだという風に言われることが現在でも多くあります。しかし、脳や神経に何らかの原因があるために、決して本人の性格でも親のしつけが原因でもありません。また、薬を飲めば治ることも手術をすれば治る障がいでもありません。ADHDは見た目に表れることはなく、行動面に症状が表れますので理解されにくくなりますが、しっかりと周りの大人たちを始め子供達も障がいについて理解して接することが大切です。

 

ADHD7歳を目安に診断が確定される

発達障がいの1つであるADHDは、小さい年齢の子供であれば多くの子供が行う行動なので、乳幼児期には気が付くことは難しくなります。ですので、ある程度待っていられる様に成長した年齢を目安として診断されることが多くなります。目安としては小学校に入学して1年が経過するくらいの7歳頃にはADHDかどうかの診断が確定されます。

テストの結果で『注意欠陥』か『多動性』と『衝動性』の2つの症状が現れる、もしくは両方が7歳までに現れると、ADHDの可能性があります。しかし、このように『注意欠陥』『多動性』『衝動性』という行動がはっきりと出てこない人もいますので、専門家であっても簡単に診断を行うことは出来ません。中には、症状が軽く大人になるまでADHDだったことに気が付かなかった人もいますので、気になる症状がある場合にはまず専門家に診てもらうことが大切です。

ADHDの特徴は後述で詳しく紹介しますが、ADHDは3つのタイプに分かれることが多く、大まかには以下のタイプになります。

 

【混合タイプ】


『注意欠陥』『多動性』『衝動性』の全症状が表れますが、どの症状が強く表れるかは人によって異なります。一見するとADHDとはっきりわかりやすいと思われがちですが、症状の重さは個人差がありますので軽い場合には、ADHDとわかりにくいこともありますので、大人になるまでADHDとわからない人もいます。

■主な行動の特徴

・忘れ物が多い

・物をすぐに忘れてしまう

・落ち着きがなく座っていられない

・部屋から出て行ってしまう等

 

【注意欠陥が優勢なタイプ】


『多動性』や『衝動性』は目立ちにくくなっているものの、『注意欠陥』が特に強く表れるタイプです。ADHDは男の子に多い障がいと言われていますが、このタイプは女の子に多く見られます。『多動性』や『衝動性』といった突発的な行動は目立たないことが多いので、周囲からは気が付かれず大人になるまでADHDだと気が付かない人も多いです。

■主な行動の特徴

・気が散りやすく注意が散漫している

・ぼーっとしていることが多い

・忘れ物がとても多い等

 

【多動性・衝動性が優勢しているタイプ】


『注意欠陥』の症状は目立たないものの、『多動性』や『衝動性』が特に目立つタイプです。学校では行動面で目立ってしまいますが、他のタイプに比べると数は少ないと言われています。衝動的に手が出てしまいますので、教師や大人に叱られることが多く乱暴者というイメージにとられやすくなるので、障がいだということをしっかりと周りも認識してサポートしていく必要があります。

■主な行動

・落ち着きがなく授業中に立ち歩いてしまう

・話してはいけないのに授業中ずっと話してしまう

・小さいことでカッとなって叩いたり蹴ったりしてしまう

・ルールや順番を守ることが出来ない等

このように大きなタイプは3つにわかれますが、ADHDは脳の障がいになりますので、個人差がありこの3タイプにきっちりとはまらない人もいます。ADHDは学齢期の約3%~7%の割合でいるとされていますので、30人で1クラスに1人程度はいることになります。この数字からも分かるようにADHDは決して珍しい障がいではなく、とても身近にいることがわかります。そのため、しっかりと周りの人がADHDという障がいについて理解し子供達へも伝えていくことが大切です。

 

『注意欠陥』『多動性』『衝動性』が大きな行動の特徴

ADHDは名前にもあるように『注意欠陥』『多動性』『衝動性』という行動があることが大きな特徴です。では、『注意欠陥』『多動性』『衝動性』とは実際にはどのような内容や行動として現れるのでしょうか?詳しくみていきましょう。

 

『注意欠陥』


ADHDの大きな特徴である『注意欠陥』ですが、行動としては注意力と集中力が欠けてしまうことを指します。ある程度の年齢に達すると一定の時間であれば、特定のことに意識を向けて(注意)、集中することが出来ます。しかし、ADHDの人はそれが難しく、注意力が散漫になってしまったり、特定の行動や何もせずに待っているということが非常に苦手です。『注意欠陥』の行動は日常生活や学校生活では具体的に以下のように表れることが多くなります。

・活動で細かい部分まで注意をはらうことが難しく、何度も不注意な間違いをしてしまう。

・遊びや活動を最後まで集中し続けることが難しい

・好きなことや興味があることは集中しすぎてしまい切り替えが出来ない

・計画をたてて行動することがしづらい

・グループ活動などで自分の行うべき役割を最後まで全うできないことが多い

・授業で必要な文房具をたびたびなくす

・周りが話していたりするとすぐに影響を受けて集中出来なくなってしまう

・ルールを守れずに自分勝手な行動をしてしまう

・大切な約束を忘れてしまったり遅刻したりする

 

『多動性』


ADHDの大きな特徴の2つ目は『多動性』です。『多動性』とはじっとしていることが出来ず、すぐに立ち歩いたり気持ちが向くままに歩いて行ってしまうことを指します。体が動いてしまうことは無意識になっていますので、自分でコントロールすることが出来ません。目で見たものや耳で聞こえたものなど、自然に体に入ってくる情報で、体が勝手に動いてしまいます。『多動性』の行動は日常生活や学校生活では以下のように現れます。

・しゃべりだすと止まらない上に、話してはいけない時にも喋るのを止められない

・手足をガサガサ動かしたり、いすの上でもじもじしたりする

・走ってはいけない場所や登ってはいけない場所へ登ったりする

・静かに遊ぶことが出来ないことが多い

・夢中になってしまうと周りが見えなくなってしまう

『多動性』はあくまでも無意識なもので、意図的にこのような行動をしているのではありません。しかし、授業中などは他の子供達は静かに席について学習しているのに対して、立ち歩いてしまったり手足をガサガサと動かしてしまう多動性が強いADHDの子供は目立ってしまい、他の生徒から怪訝な顔で見られることがあります。そのため、教師や大人はしっかりと症状について説明し子供達に理解してもらうことが大切です。

 

『衝動性』


ADHDの3つ目の大きな特徴は『衝動性』です。『衝動性』は字の通り、自分の衝動的な気持ちを抑えることが出来ないということです。

私たちは本来、自分が行動に移す時には、強く意識せずと自分が行動することに対しての予測をしてから行動します。例えば、喧嘩をした時に思わず暴言を言ってしまいそうになるけれど、その言葉を言ってしまうと喧嘩がさらにヒートアップしてしまうのでは、と一旦考える力が成長と共に備わっていきます。しかし、ADHDの人はこの衝動性が強く表れてしまい、(考える)という行動を中々することが出来ません。ですので、頭で考えるということを飛ばして、行動へ移ってしまうのです。『衝動性』の行動は日常生活や学校生活では以下のように現れます。

・順番を待つことが出来ず割り込んでしまう

・他の人が会話を楽しんでいる時に割り込んで入ってしまう

・質問が終わる前に出し抜けで答えてしまうことがある

・カッとした時にすぐに手が出てしまう

このように『衝動性』は自分の気持ちがしっかりとコントロールすることが出来ず、感情のままに行動していまいます。思いついた行動をしてもいいのか、と自分の頭で考えるよりも先に体が動いてしまいますので、周りからは乱暴者なのではと誤解を受けたり、付き合いにくい人だと思われてしまうことがあります。

 

まとめ

ADHDという障がいは、性格やしつけが原因の行動なのではと勘違いされてしまうことが多く、小さい時から怒られたり周りから厳しい言葉をかけられることが多くあります。知的な遅れなどは少ないので、特に大人になってから気が付くことも多く今まで人間関係に悩んできた人も多くいます。

乱暴者やわがままな子と非常に周囲から誤解を受けやすいADHD。原因はわかっていないものの、しつけ等といった原因ではなく障がいであるために自分の感情がコントロールすることが出来なかったり、突発的な行動に出てしまうのです。周囲はこれらADHDの特性をしっかりと理解しつつ、発達特性に応じたサポートを行っていくことが大切です。

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